エコな人間になりたい。NorrライターRenです。
北欧の人たちを見ていると自分も見習わなきゃっていつも思わされます。
大量消費社会の終焉をとうの昔に迎え、持続可能な社会へ向けた働きかけが多方面で見られる北欧。かねてから環境問題にとりわけ興味関心が強かった僕ですが、温暖化については特に興味がありました。
その常套的な温暖化対策で挙げられる移動手段と言えば、、、
そう、自転車に乗る
ということです(もちろん歩きも)。車よりもチャリ、そんな考え方が特に根強い国があるんです。
デンマーク🇩🇰ですね。
首都コペンハーゲンでは特に。国の顔とも言える政治家でさえも自転車で国会に向かうんだとか。雨の日も、晴れの日も自転車で移動。季節?気温?そんなものは関係ない。ただただ自転車で移動する。それがデンマーク流。
冒頭のタイトル「VikingからBiking」
かつてヨーロッパを席巻した北の海賊たちの中にはデンマーク人もいました。ヴァイキングです。今となっては環境先進国と言われる国へと変貌し、中でもバイキング(自転車に乗ること)で有名に。
今回はそんなデンマークの自転車文化が根強くなった背景について見ていきます!
デンマークが自転車大国ってどういうこと?
まず、そもそもどれくらい自転車文化が浸透しているのかということについて。
このポスターからわかること(抜粋して要約)
・自転車に乗る人の男女比(男性 47%:女性 53%)
・自転車に乗る用途として余暇(37%)が一番多く、ついで通勤(34%)
・デンマーク人は1日平均1.6km自転車に乗る(コペンハーゲンでは3.0km)
・子供達の49%が自転車で通学
デンマーク人の4人に1人は5km以下の移動であれば自転車を使うそう。距離を考えなかったら16%の人が自転車で移動するようですね。
これはデンマークの交通網がどうなっているかを表している図。この図から見てわかるように、それぞれのカテゴリーで通る道路がはっきり別れている。
必ずしも段差が設けられているわけではありませんが、これなら安心して自転車に乗れますね。段差がないところでも、自転車が通行するためのブルーのレーンもあります。
日本でも自治体によっては自転車レーンがあったりしますよね。そんなイメージです。これだけはっきりレーンが別れていたら事故も減りそうです。
このレーンに関してデンマークではこの交通網がかなり広範囲に広がっているということ。デンマーク全土で見れば、自転車レーンは12,000kmにもなります。
首都コペンハーゲンでは400km。
この充実した道路網が自転車での移動の利便性と安全性を高めていると言えそう。
・デンマーク人の10人に4人が車を保有
・デンマーク人の10人中9人が自転車を保有
・2人の子どもがいる家庭の26%がカーゴ付きの自転車を保有している。
・75%の人が寒い冬でも自転車を使う
デンマークの人口よりも自転車の数の方が多い。人口が578万人の国だから、複数台持っている人もいればいわゆるレンタサイクルが多く見られる。コペンハーゲンに行けば一目でわかりますが、その自転車の数は本当に凄まじいです。これでもかっていうくらい自転車で移動する人を見かけます。
いかにしてデンマークに自転車が伝わったのか?
●1880年代:自転車がデンマークに上陸
1885年に現在の元祖と言える自転車が発明されたので、その流れに沿ってデンマークに上陸しました(ちなみに自転車の原型が発明されたのは、1818年ドイツにて)。
●1920〜30年代:デンマーク中に自転車文化が広まる
1880年代に上陸して以来、社会的地位などに関係なく誰もが楽しめる移動手段として広まりました。当時、デンマーク人は「平等」と「自由」の象徴として自転車に跨っていました。
●1950年代:自動車の普及
人力で動く自転車の普及から時が経ち、より便利な自動車が広く乗られるようになります。自転車から自動車への転換期というわけですね。
●1970年代:自転車への回帰
なぜ?という疑問が頭に浮かびますが、石油危機です。中東地域での石油危機で車離れが助長されます。1962年からコペンハーゲンの中心部にある大通り「ストロイエ(Strøget)」は歩行者のみに。
それ以降、環境に配慮したデンマーク人が増え、自転車人口が増える。つまり、自転車社会へ舵を切ったきっかけは環境への意識というよりも世界情勢に則していたようです。もちろん、現在の自転車社会ができた背景には原油に課かる税金、自動車の維持費などが挙げられます。
自転車に乗るメリットとは?
これまで自転車社会の全貌からその歴史まで見てきましたが、自転車に乗ることの良さって何でしょうか?
このポスターはデンマークの自転車社会のポジティブな効果です。
①自動車でなく自転車で移動した方が毎kmあたり1€に相当する健康面でのメリットがある
(→少しわかりにくいですが、要は自動車よりも体を動かすという点でメリットがあるということですね)
②コペンハーゲン近郊での自転車利用者はトータルで年間2億1500万ユーロの節約になる
③コペンハーゲン近郊での自転車利用者はトータルで年間110万日分健康な日を送れる
④2009〜2014年の間で2億6800万ユーロ以上が338件にわたる自転車事業(インフラ整備等)に投資された
※②ですが、この数字だと全くイメージできない。概算してみました(あくまでも大雑把な計算です)。
コペンハーゲンの人口:63万人
コペンハーゲンでの自転車利用者:31.5万人(全人口の半数が毎日自転車利用)
2億1500万ユーロ ÷ 31.5万人 ≒ 682ユーロ ≒ 8万2587円(€1=¥121で計算)
つまり!年間で8万円以上の節約になるということ!!
※③ですが、②と同様イメージが全くできない。同じ方法で概算していきます。
コペンハーゲンでの自転車利用者:31.5万人
110万日 ÷ 31.5万人 ≒ 3.49日
言い換えれば、毎年3.5日分の健康な日が増える!ということ!!
こう考えれば、自転車に乗るだけで金銭面でも健康面でもメリットがあるとわかります。幸せな国として知られるデンマークはこうした面からも生活への満足度を高めているのかもしれません。
デンマークだからできたこと?
2017年には世界で一番自転車に優しい国に選ばれたデンマーク。あのニューヨークもデンマークの自転車文化を取り入れようとしているんだとか。オランダであったり、他のヨーロッパの都市でも自転車が主流であることは今となっては珍しくない。
でも、そこに共通するのが、街の規模感。大きすぎない街だからこそ実現できることなのかもしれません。
同時に、行政と市民との間の相互理解が厚いのではないかと思わされます。環境への理解、健康への理解、安全への理解など多角的に見る必要がありますね。
道路の整備だけで市民レベルでの自転車への意識と理解がないと持続可能な社会の構築は難しそうです。
世界でも大が付くほどの大都会東京のその実現可能性はどうでしょうか?
参考:
https://denmark.dk/people-and-culture/biking
https://www.visitcopenhagen.com/copenhagen/sightseeing/copenhagens-bike-culture
http://www.bikemuse.jp/knowledge/
文筆家、写真家、イラストレーター。学部時代のスウェーデン留学が大きな転機となり、北欧のウェルビーイングを身体で学ぶべく、ノルウェーとデンマークの大学院に進学。専門は社会保障、社会福祉、移民学。2021年6月両国にてダブルディグリーで修士号取得後、帰国。現在は、アニメーション業界に飛び込み、ストーリーテリングの観点から社会へ働きかけるべく活動を広げている。フリーランスとしても活動している。又、北欧情報メディアNorrから派生した「北欧留学大使」を主宰し、北欧留学支援もしている。
■これまでの活動歴:「令和未来会議2020”開国論”(NHK)パネリスト出演」、「デモクラシーフェスティバル2020(北欧5カ国大使館後援)イベント主催」、その他講演多数