移民大国として知られるスウェーデン。他の北欧諸国よりも移民難民を受け入れてきて、外国に背景を持つ人は24.9%です。どのようにして移民大国になったのか、その歴史についてはコチラからどうぞ!
日本でも「移民」と聞くと、どのように社会に適合していくのかが課題とされていますがスウェーデンでもその限界が見えてきたのかもしれません。
今回はそんなスウェーデンの移民事情について選挙結果を元にみていきます。
スウェーデンの選挙の基本
まずは基本的なスウェーデンにおける選挙システムについて数字を使って確認します。
349
これは議席数を表します。18歳から立候補でき、その中から349人が選出されます。
4
これは4%を表します。どの政党も4%以上の得票率がないと議席を獲得できません。
4
もう一つの4。これは4年毎に選挙が行われることを意味しています。前回の選挙は2018年9月です。
どんな政党があるの?
今回は2018年の選挙結果から議席を獲得した8政党について議席の多い順に説明します。
#1社会民主党(Social Democrats)
長きにわたって政権を担う政党で、労働党に核を持つ。自由、平等、結束を謳い、雇用創出やより良い教育を目指している。スウェーデンを代表する政党。現在は環境党(後述)と政権を担っている。
#2穏健党(Moderate Party)
右派第1党として機能していて、保守派。個人の選択の自由が政策の中心であり、減税や自由経済を推進する。スウェーデンで2番目に大きい政党。
#3スウェーデン民主党(Sweden Democrats)
1988年に創設されて以来、近年急速に支持を集めているスウェーデン民主党。ナショナリズムに基づいた思想が特徴的で、反移民政策で知られている。スウェーデンの社会保障維持に重きを置いている。
#4中央党(Centre Party)
農民の政党に起源をもつ政党。国の経済発展や環境問題に力を入れている。
#5左党(Left Party)
共産党から変化してできた政党。雇用、社会福祉、ジェンダーに重きを置いている政党であり、社会民主党と重なる点が多い。しかし、EU加盟には依然反対するなどすれ違う点も多い。
#6キリスト教民主党(Christian Democrats)
伝統的な家族愛が根源という精神を軸としている。政策としては、高齢者へのケアの向上、子どもを持つ家庭への福祉の向上などがある。また、企業への規制緩和など経済発展と失業に対して意欲的に活動している。
#7自由党(Liberals)
個々人への尊重に重きを置いた自由主義政党。特に教育分野に力を入れている。また、NATOへの加盟に賛成しており、原発への投資には意欲的。
#8環境党(Green Party)
政党名のごとく、環境保護に力を入れている政党。反原発を訴えており、EUの統合政策には賛成を示している。現在は第1党である社会民主党とともに政権を担っている。
これまでの選挙結果は?
それぞれの政党の考え方について簡単に頭に入ったところで、近年の選挙結果について見ていきましょう。
社会民主党とスウェーデン民主党に注目です。
選挙の結果から民意を考えるとするならば、近年のスウェーデン民主党(黄)の台頭は無視できないでしょう。反移民を訴えている政党として活動していて、議席を初めて獲得したのは2010年。5.7%でした。
それから2回の選挙を経て、前回選挙(2018年)では17.5%の投票率を獲得して、第3党に。スウェーデン民主党への支持が急速に集まっていることがわかります。
それに反して、第1党である社会民主党(青)の支持率は年々低下しています。加えて、環境党(黄緑)の支持も低下しています。つまり、現政権を担う社会民主党と環境党の支持が低下しているということです。
これまでスウェーデン政府は移民難民に寛大な態度を示してきました。しかし一方で彼らの統合政策が追いつかず、それが選挙結果として現れているのかもしれません。
「北欧モデル」と称される盤石な社会保障制度を持続的に機能させていくためにどう動いていくのか、今後ともスウェーデンの選挙には目が離せません。
参考:
Sweden.se:
一般社団法人スウェーデン社会研究所:
文筆家、写真家、イラストレーター。学部時代のスウェーデン留学が大きな転機となり、北欧のウェルビーイングを身体で学ぶべく、ノルウェーとデンマークの大学院に進学。専門は社会保障、社会福祉、移民学。2021年6月両国にてダブルディグリーで修士号取得後、帰国。現在は、アニメーション業界に飛び込み、ストーリーテリングの観点から社会へ働きかけるべく活動を広げている。フリーランスとしても活動している。又、北欧情報メディアNorrから派生した「北欧留学大使」を主宰し、北欧留学支援もしている。
■これまでの活動歴:「令和未来会議2020”開国論”(NHK)パネリスト出演」、「デモクラシーフェスティバル2020(北欧5カ国大使館後援)イベント主催」、その他講演多数