ノルウェーの働き方
これまで4年ほどオスロで働かれて、その前は日本でも働いた経験があると思うのですが、その違いであったり、ノルウェーに来て驚いたこととかはありますか?
「帰りやすい」ですね、ノルウェーの方が。
帰りやすい、、ですか?
会社から帰りやすいですね。4時、5時くらいになると人がほぼいなくなって、それで仕事が終わりなんですね。次の始業時間までは完全にフリーです。それから一年で25日間休暇が取れることがノルウェーの国レベルで決まっているので、休みやすいですね。一年で25日も休めれば全然嬉しいです。
すごい仕事も好きだし、やっていることも好きで、これからもぜひ続けたいと本当に思っています。ただそれとはまた別に自分自身の次のステップアップだったり、インプットを増やしたり、普段していないことをする時間を作るというのは次の自分への投資になると思いますね。そういった意味でも仕事が好き・仕事に勤しむというのと矛盾しない形でちゃんと休めるというのが自分の中ですごく納得出来ている部分というか、この形式・習慣のすごく良いところだと思います。
働いてみて、例えばプロジェクトベースでみたときに進め方だったり会議の仕方は違ったりしますか?
そうですね、違うかもしれないですね。日本だと、未経験の人でもとりあえず会議に参加するというのがありました。それ自体は自分自身良い意味で速いうちに先輩たちと同じ現場に出れたと今は思うけど、ノルウェーではある意味効率的というか用がある人しかそもそも出ないし、定例のミーティングであっても話すことがなければないし、という感じですね。
必要に応じて、必要な分だけ、必要な時間やるということですね。
そうですね。それで良いと思います。それから根本的な部分で、うち(Vivaldi社)は公用語が英語なんですけど、日本よりはきっと英語にスイッチするというのを簡単に求めることができると思います。頼めばみんな英語で話してくれるので。その辺のインターナショナルな環境への垣根は日本よりは低いと思います。
会議にしてもそうで、通訳はいなくても良いし、誰が出てもインターナショナルなディスカッションが出来ます。その辺のリソースの動かせる幅は、言語面に見ても広いのかなと思います。
コミュニケーションが誰であれスムーズに進むということですね。
そうですね。もちろんノルウェー人同士であればノルウェー語を話しますし、僕も日本人の同僚とは日本語で話します。英語でのコミュニケーションが担保されているというのが心強いですね。
基本的にみんなマルチリンガルで、僕らは少ない人数でやっているので色んな言語を扱えるスタッフがいるのは良いなと思います。少ない人数で人数以上の言語を話せるので。
日本人だけだとおそらくそうはいかないですよね。日本のサービスだと日本人が相手で終わってしまうかもしれない。せっかく世界中でダウンロードできるプロダクトであっても、どれだけ良いプロダクトを作っても言語の壁が出てくるかもしれないので、そこが最初から様々な言語でアプローチ出来るのがすごく気持ちいいですね。
社内で感じるヨコの関係
そういうフラットな環境で働かれてて、社員同士であったり役職に付いているいわゆる上司の人との距離感はどうですか。
近いとは思います。特に北欧の中でもうちの会社は家族ぐるみの付き合いがある方かなと思っています。例えばクリスマスのシーズンとか忘年会のような文化があって、会社でご飯に行くのが一般的なんですね。会社によって家族同伴だったりそうでなかったりするんですが、おそらく社員だけでご飯に行く方が普通です。うち(Vivaldi)は奥さん、旦那さん、パートナーを連れてくるのはオッケーですね。
オフィスがアメリカにもあるんですけど、例年夏にみんなで行くことになっていて、そのとき家族同伴なので結構家族ぐるみの付き合いが多いですね。
社長であろうが、役員の人に対しても同じで、みんなが同じ釜のご飯を食べて、子供達も一緒に遊んでます。上下関係と思ったことは実はあまりなくて、自分にとって役員クラスの人はもちろん経験があるので相談できる相手、信頼できる人って感じで、ある種頼れる同僚みたいな感じです。自分の責任領域に関しては、自分も頼ってほしいし相談してほしいですね。指示待ちをあまりしたくないので、自分がこうすべきだと思ったら提案するし、その辺はフランクに相談なり提案なりして一緒に進めていく形を特にうちはフラットにやっているかなと思います。
役職関係なく、自分が思ったこと、意見を言いやすい空気があるということですね。
めちゃくちゃ言いやすいですね。言いにくいと思ったことはないですね。
先ほどのクリスマスのお話は、日本でいう忘年会に近いのかなと思ったのですが、基本的に飲み会みたいなのはないということですか?
通常はないですね。数ヶ月に一回くらいチームでご飯行こうとか会社で行こうとかがあるくらいですね。特にうちはBtoC(Business to Customer)ということもあると思うんですけど、クライアントと会食にいくことはないし、アフター5は完全に個人の自由ですね。
確かにそれはそれで個人の自由が担保されていて良いなと思ったんですが、一方で社員間でのコミュニケーションはいつどうやってやっていますか?日本だとある種飲み会がコミュニケーションの場になっていると思うのですが、その辺はこっちではどういった手段とか時間にお互いを知ったり、コミュニケーション取ったりしていますか?
人柄を知るっていう部分だと、仕事以外の話をすることが重要かなと思うんですが、そういう点でいうとランチの時間にうちのリビングで一緒に食べてプライベートの話をしたり、それこそ数ヶ月に一回ご飯行った時に二軒目行ったりして色んな話をしたりしますね。それで十分仲良くなると思います。仕事合間に雑談もしたりするので、時間の確保には困ったことはないですね。
スウェーデンだとフィーカ(fika)の時間があったり、フィンランドではカハヴィタウコ(kahvitauko)みたいなコーヒーブレイクの時間が法律上保障されていると思うのですが、そういった時間はノルウェーにもありますか?
似たような時間はありますね。ノルウェーでは、勤務時間が5時間半を超える場合には一度休憩を挟む必要があり、8時間以上の場合には最低でも合計30分になるように休憩時間を取ることになっています。休憩の話を聞いて思い出したのですが、誕生日は結構お祝いしたりしますね。ケーキ食べたり。
楽しいですね!
そうそう。社内連絡で「2時からケーキね」って言われてみんなで集まって祝ったりしますね。ケーキ食べながら話したり。今はコロナの影響でフィジカルなイベントはできないですが。
それこそコロナの影響はどれくらいあったんですか?コアタイムなどがあったり、元々リモートで働いている人もいると思うんですけど、その辺の切り替えはスムーズに出来ましたか?
Vivaldiだけじゃなくて、ノルウェーとしてリモートワークせざるを得なかったんですが、うちも含めて未曾有の事態でしたよね。けれども、元々テレワークしている人が、フィンランドやイギリス、ロシアにいるのでオンラインで話すことがメインでその延長線みたいな感じでしたね。
だから、以前Vivaldiのバージョンが2.xから3.0に大きなアップデートがあったのですが、ちょうどみんながリモートワークしていた頃で、意外と何とかなるんだなと思いましたね。
なるほど、元々リモートで働いている人がいたということで切り替えが比較的容易に出来たんですね。
続いて「ノルウェーに来てよかったこと」について
文筆家、写真家、イラストレーター。学部時代のスウェーデン留学が大きな転機となり、北欧のウェルビーイングを身体で学ぶべく、ノルウェーとデンマークの大学院に進学。専門は社会保障、社会福祉、移民学。2021年6月両国にてダブルディグリーで修士号取得後、帰国。現在は、アニメーション業界に飛び込み、ストーリーテリングの観点から社会へ働きかけるべく活動を広げている。フリーランスとしても活動している。又、北欧情報メディアNorrから派生した「北欧留学大使」を主宰し、北欧留学支援もしている。
■これまでの活動歴:「令和未来会議2020”開国論”(NHK)パネリスト出演」、「デモクラシーフェスティバル2020(北欧5カ国大使館後援)イベント主催」、その他講演多数