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[後編]ノーベル賞のA to Ö〜ノーベル賞のカコとイマ〜

(*The eye-catch image above is borrowed from © Nobel Media AB/Photo/Alex Ljungdahl)

毎年12月10日(ノーベルの命日)に行われるノーベル賞授賞式。ノーベルはどんな想いでこの名誉ある賞を創設したのでしょうか?
今回はそんな「ノーベル賞のカコとイマ」に迫ります。

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アルフレッド・ノーベルの生涯については「[前編]ノーベル賞のA to Ö〜アルフレッド・ノーベルの生涯〜」を参照ください。





ノーベル賞ってどんな賞?


2019年度ノーベル化学賞受賞者
吉野彰名誉フェローとスウェーデン国王カール16世グスタフ
© Nobel Media. Photo: Nanaka Adachi


今一度、ノーベル賞の概要について確認しておきましょう。ノーベル賞はスウェーデンの実業家アルフレッド・ノーベルの遺言によって創設された権威ある賞です。1901年に始まり、以来毎年授賞式が執り行われています(例外年あり)。

ノーベルの遺言に沿って

物理学(Physics)
化学(Chemistry)
生理学・医学(Physiology or Medicine)
文学(Literature)
平和(Peace)

の5分野で毎年選出されますが、1968年から「経済学(Economic Science)*」も加えられました。現在はこの「5分野+1分野」という位置付けで各専門機関によって選出が行われています。

毎秋ノーベル賞受賞者が発表されます。授賞式は、12月10日にストックホルムのコンサートホール(Konserthuset)で行われます*。その後、ストックホルム市庁舎(Stockholm Stadshuset)にて晩餐会が行われます*。

*経済学賞は厳密にはノーベル賞ではありません。1968年にスウェーデン中央銀行によって創設され、ノーベル賞と同じ評価項目、手順を経て選出されます。

*平和賞のみ例外で、授賞式はノルウェーのオスロ市庁舎にて、晩餐会はオスロのグランドホテルで行われます。


ノーベル賞晩餐会の様子
© Nobel Media AB 2015. Photo: Alexander Mahmoud


各賞の選出は以下の専門機関によって行われます。

  • 物理学賞:スウェーデン王立科学アカデミー(The Royal Swedish Academy of Sciences)
  • 化学賞:スウェーデン王立科学アカデミー(The Royal Swedish Academy of Sciences)
  • 生理学・医学賞:カロリンスカ研究所(Karolinska Institute in Stockholm)
  • 文学賞:スウェーデン・アカデミー(Academy in Stockholm)
  • 平和賞:ノルウェーノーベル委員会*(Norwegian Parliament)
  • 経済学賞:スウェーデン王立科学アカデミー(The Royal Swedish Academy of Sciences)

*平和賞の選出方法については、ノルウェーのノーベル委員会がその権限を担っており、ノルウェー政府によって任命された5名が選出を行なっています。




なぜノーベルは5分野を選んだ?


ノーベル賞の概要についてわかったところで、そもそもなぜ5つの分野を遺言に書き残したのでしょうか?ダイナマイトを始めとする様々な発明品を世に残したことを考えると、物理学と化学を選んだことには妥当性があります。では、生理学・医学、文学、平和についてはどうでしょうか?それぞれの経緯について見ていきましょう。


生理学・医学賞


生理学・医学賞については、ノーベルの生来の健康状態が大きく影響していると考えられます。ノーベルは常々消化不良や頭痛、慢性的なうつ病に悩まされていました。青年期より、数週間療養所で過ごしたことも多かったそう。しかも、療養で完全に体調が回復することもなかったと言います。青年期の健康状態の悪化の原因として、オーバーワークと過度な心的ストレスが挙げられています。生涯独身でこの世を去ったノーベルはこんな言葉を残しています。

“My home is where I work and I work everywhere.”

私の家は職場だ。私はどこでも働く。

こうしたノーベルの生涯の健康状態を考えると、彼がノーベル賞の1つに入れた理由が見えてきますね。


文学


多くの発明品で有名なノーベルですが、実のところ文学にも極めて優れた才能を発揮していました。幼少期から家庭教師のもとで勉学に励んだノーベルは17歳の時には母語であるスウェーデン語に加えて、英語、ドイツ語、フランス語、ロシア語を流暢に扱うことができたそうです。文学に強い興味をしてしていたノーベルに対して、父イマニュエルは反対し、彼をエンジニアの道と進ませるために留学させたという話もあります。

無類の文学好き出会ったノーベルは、研究に勤しむ傍らでたくさんの詩(ポエム)を残しました。合間を縫ってはたくさんの文学を楽しんだそうです。彼は発明品だけでなく、プライベート図書館も残しており、そこには著名な作家や哲学者などの書籍が1500冊以上も貯蔵されています。ノーベルはこんな言葉を残しています。

“A recluse without books and ink is already in life a dead man”

本と筆を持たない隠遁者は死んだも同然だ。


平和


ノーベル賞の5分野の中でも少し毛色の違う分野の「平和賞」。ノーベルは何を思って、遺言に「平和」という文字を残したのでしょうか?

[前編]ノーベル賞のA to Ö〜アルフレッド・ノーベルの生涯〜」でも記述したように、大きな動機として、オーストリア女性のベルタ・フォン・ズットナー(Bertha von Suttner)との出会いがあります。仕事仲間として出会うことになるのですが、ズットナーが婚約のためにオーストリアへ帰国後も2人は文通を続けます。ズットナーが平和主義運動で活躍している様子に感化されて、これが平和賞を生んだ大きな影響と言えそうです。

彼女は1889年に刊行した「武器を捨てよ!(Lay Down Your Arms.)」で有名で、1905年のノーベル平和賞を受賞しています。彼女が女性初の平和賞受賞者であるという点も大きな功績だと考えられます。


©️Ola Ericson/imagebank.sweden.se
晩餐会後にこの「黄金の間」で舞踏会が開かれます


ダイナマイトを発明したノーベルですが、これはもともと建設業などでの効率化を図るという目的がありました。のちに戦争で誤用されてしまうノーベルですが、彼自身戦争目的で使われることを予期していたそうです。破壊的な威力をもつダイナマイトを目の当たりにすることで、それを戦争の抑止力としようとしたそうです。しかし、その予想に反して、実際には戦争で多用されることとなります。




ノーベル賞の受賞歴


1901年に始まって以来、これまでに数多くの人・団体が受賞してきました。彼の遺言に「ノーベル賞は国籍に関係なく、人類の進歩に一番貢献した人に与えられる」と残されている通り、世界のあらゆる国・地域で活躍されている人々を讃えてきました。その大まかな受賞歴についてここではまとめます。


ノーベル賞受賞歴まとめ(2019年12月現在)

  • 受賞者数:923名(うち84名は経済学賞)
  • 受賞団体:27団体
  • 最年少受賞者:マララ・ユスフザイ(当時17歳)平和賞
  • 最年長受賞者:ジョン・グッドイナフ(当時97歳)物理学賞
  • 女性受賞者数:54名
  • 日本人受賞者数:28名(米英国籍含む)


原則毎年選出されますが、一部選出されなかった年もあります。その多くは第一次世界大戦 (1914-1918)と第二次世界大戦期(1939-1945)です。

過去に受賞を断った人は2人います。その理由は、公的な賞を一切受け入れないということと、自身をそれに値しないと判断したことがあります。

強制的に拒否させられた人は4人います。うち3人はヒトラー政権下の圧力によるもので、もう1人はソビエト政権によるものでした。

獄中にいる時に受賞した人は3人います。3人とも平和賞受賞者で、それぞれドイツ、ミャンマー、中国です。

その他の詳しい受賞歴についてはHPをご覧ください。


©️Anna Andersson/imagebank.sweden.se
晩餐会が開催されるストックホルム市庁舎




前編・後編とアルフレッド・ノーベルならびにノーベル賞について見てきました。世界で最も権威のある賞であるノーベル賞がどのようにしてできたのか、ノーベル自身の生涯についても見て取れたかと思います。近年では日本人も立て続けに受賞しています。これからも人類の進歩に貢献すべく日本人のみならず、世界が注目する賞になれば良いなと切に願います。

末筆ながら、この記事を寄稿するにあたって多くのストーリーを抜粋しました。さらに理解を深めたい方はぜひTHE NOBEL PRIZE(下記リンク)を参照されてください。




参考:

THE NOBEL PRIZE:https://www.nobelprize.org/

注)本記事の内容は全て、THE NOBEL PRIZEを要約、一部抜粋したものです。

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