こんにちは、NorrライターのRenです。
久しぶりにガッツリブログを書いてみようと思います。
ですが、いきなり、問題です!
20世紀の間に自然災害による1年間の死者数はどうなった?
いきなりのクイズでしたが、何問正解できましたか?
これはチンパンジークイズというもので、これまでの知識で解こうとすると、正答率がチンパンジーよりも低くなってしまうとされているクイズです。チンパンジーはランダムに選ぶので、三択のクイズだと33%の確率で正解できるということ。
もちろん、正しく世界の状況を判断できている人もいると思います。
この類のクイズの火付け役となったのは、スウェーデンの学者ハンス・ロスリング(Hans・Rosling)さんです。プレゼンテーションのTEDの名物スピーカーとして有名です。2017年に亡くなってしまいましたが、彼が魂を込めて書き下ろした「ファクトフルネス(Factfulness)」で知っている人も多いかもしれません。
ハンス・ロスリングってどんな人?
[略歴]
1948年スウェーデン、ウプサラ生まれ。スウェーデンの医者(内科医)であり教授であり、統計学者。
ウプサラ大学で医学と統計学を学んだのち、インドで公衆衛生について学ぶ。
その後、アフリカの医療現場に20年ほど従事する。2006年にGapminder(ギャップマインダー)を共同で創設する。
Gapminderはデータによる事実に基づいて世界を見ることを目的とした財団で、a fact tank (not a think tank) とHPにて説明。
2006年にはTEDに登壇して、そのユーモアのある口調とデータに基づく核心的な世界の見方で一躍注目を集める。
2017年に68歳にして逝去。
僕がハンスさんを知ったのは、高校3年生のとき。国際系の学部を目指していた僕は、リスニング対策として英語科の先生にTEDを勧められました。
とりあえず気になるプレゼンを見てみたのですが、最初に見たのがハンスさんの「How not to be ignorant about the world」でした。大好きなプレゼンでかれこれ50回くらいは見たと思います。
ハンスさんの口から出る世界の見方がまさに目から鱗で、それからというもの漁るようにハンスさんのプレゼンを見ていました。冒頭のクイズはこのプレゼンからなのですが、なかなか正解できなかったのを覚えています。
今思えば、英語の勉強で見始めたその動画が、非ネイティブのスウェーデン人によるモノだったのは皮肉ですね。
事実に基づいて世界を見る
僕たちは何かを判断する時、それまでに得てきた情報を使います。でも、その情報は、例えば小学校に学んだことかもしれないし、友達からの伝聞で知ったことかもしれません。その情報は時として、今の時代にそぐわない「時代遅れ」なのかもしれないし、その情報自体が間違っている可能性もありますよね。
ネット時代・SNS時代となった今、その傾向がますます加速して、僕たちはその情報洪水の中で生き残らなければならないわけです。
何が正しくて、間違っているのかを取捨選択するのはすごく難しい。人の感想は主観に基づいているので、その人にしか当てはまらないことだってあり得ますよね。
その点、「数字」はいつだって事実だけを伝えてくれます。データに間違いがあることはありますが、あくまでも間違っているのは「人」なので、数字自体には客観性があります。
ハンスさんはその間違えようのない数字を根拠に「世界のいま」を伝えようとしていました。だからこそ説得力があって、核心的で革新的なモノの見方をできたんだと思います。
「アフリカ」と聞いて何を思い浮かべる?
これを見た瞬間、何が浮かびましたか?
僕はいまノルウェーの大学院に在籍しているのですが、この問いはまさに授業で聞かれたことです。渡された紙に頭に浮かんだことを書くように言われました。
「これって偏見だよな、、これ書いたら失礼かな、、?」と思ってしまった僕は、頭にあったアフリカのイメージを正直に書くことができませんでした。
書いたのは、「砂漠」や「ピラミッド」のような無難なことでした。
それでも頭にあったのは、「貧困」「開発」「紛争」。
でも、このイメージは少し間違っているんです。東京のオフィス街とまではいかずともビルはたくさん建っているし、貧困層だって確実に少なくなっています。
ケニア出身のクラスメイトがいるのですが、彼女はiPhoneを持っています。ノルウェーの大学院までくるくらいの人なので、ケニアではエリートなのかもしれないし、例外的な富裕層なのかもしれません。
タイの田舎で育ったという女の子はMacbookを持っています。Apple社の製品は日本では主流ですが、そんなに簡単に買える値段ではないですよね。
「思い込み解放宣言」
僕たちの頭の中には、偏見という厄介な汚物がこびりついていて、これが僕たちの判断を鈍らせています。
もしかしたら、日本は世界ではもう先進国と見なされていないかもしれないし、ケニアの家庭の所得は10年前の数十倍なのかもしれません。
僕たちはどうしても「珍しいこと」や「真新しいこと」に反応してしまうので、ニュースではマイノリティーに目が向けられてしまう。そればかりを耳にするので、無意識にイメージが脳に刷り込まれていく。
社会のほんの一部分をその社会そのものとして拡大解釈してしまうのはできれば避けたい。
思い込みを捨てるように日々していますが、それでもすごく難しい。ノルウェーに来てからアフリカ系の友達が増えた僕ですがそれでもまだ完全に色眼鏡を外せていません。
ノルウェー人の友達と話していても、インド人のルームメイトでも、仲良しのガーナのクラスメイトでも、やっぱり僕が持っていたイメージとズレている事が結構あります。
「知ろう」とする姿勢はすごく大切だなと日々感じます。その国の人と話せば、自分の見方がいかに偏っていたかがわかります。
ひょっとするとこれはコミュニケーションの基本かもしれません。ここで齟齬が起きてしまうから紛争や戦争に繋がっていく。相手を正しく理解しようとする姿勢がコミュニケーションの基本で、最低限必要な相手へのリスペクトなのかなと思います。
それでもマイノリティーの視点を忘れない
先ほどあげたハンスさんのプレゼンでは、こんな助言がされています。
だいたいの物事は良い方向に向かっている
Most things improve.
環境問題などについては当てはまりませんが、世の中の多くの事は良い方向に向かっています。
自分の中の経験やニュースで見たものを「一般化」しすぎない事が大切だとも言っていました。今までの自分の「意識」に少しだけ変化を加える事で世界の見方が変わるかもしれません。
ただ、1つ心に留めておきたいのがマイノリティーの存在。
社会にはどうしても例外が存在がいるので、ニュースで見た事、知った事が実際に世界のどこかで起きている、そんな視点は常に持ち続けたいと思います。
たった1°視点を変えるだけで、そこから見えてくる世界が180°変わってくるはず。
それが「正しい世界のミカタ」なのかもしれません。
長々と書いてしまいましたが、ハンスさんが世界にもたらした影響は大きいと思います。データを正しく読み取り、世界を真っ直ぐ見る。そんなメッセージを僕は感じました。
つくづく人口1000万人のスウェーデンが世界に与える影響の大きさを感じます。ノーベル賞のノーベルもそうですが、ハンスさんはじめ、環境活動家のグレタさんもスウェーデン出身です。
なぜスウェーデンでこうした人材が育つのか?
こんなことを考えても面白いかなと思います。
さあ、最後にもう一問。
思い込みを解放して解いてみてください!
麻疹(はしか)に対するワクチンを接種する1歳児の割合はどれくらい?
正解できましたか?
一夜漬けで自分を変えるのは難しいことです。少しずつ変わっていきましょう。
僕も変わります。
一緒に変わりましょう。
最後まで読んでくださった方ありがとうございます。
下にコメント欄を設けているので、ご意見ご感想等あればどうぞ!
参考:
GAP MINDER「Hans Rosling- biography」
https://static.gapminder.org/GapminderMedia/wp-uploads/press_media/Fact_based_world_view.pdf
文筆家、写真家、イラストレーター。学部時代のスウェーデン留学が大きな転機となり、北欧のウェルビーイングを身体で学ぶべく、ノルウェーとデンマークの大学院に進学。専門は社会保障、社会福祉、移民学。2021年6月両国にてダブルディグリーで修士号取得後、帰国。現在は、アニメーション業界に飛び込み、ストーリーテリングの観点から社会へ働きかけるべく活動を広げている。フリーランスとしても活動している。又、北欧情報メディアNorrから派生した「北欧留学大使」を主宰し、北欧留学支援もしている。
■これまでの活動歴:「令和未来会議2020”開国論”(NHK)パネリスト出演」、「デモクラシーフェスティバル2020(北欧5カ国大使館後援)イベント主催」、その他講演多数
こんにちは。
ハンス・ロスリング氏が書いた「私はこうして世界を理解できるようになった」を今読み終えたところです。
ハンスさんの動画を見てみたいなーと思って検索していて、こちらをのぞかせてもらいました。
院で社会保障の勉強、頼もしい限りです。多様な価値観を、ぜひ日本に広めてくださいね。