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ソーイングデザイナー、オルソン・恵子さんのモノづくり

「黄色と青の旗がノルウェーだっけ?」、「スカンジナビアはどの国がどっちにあったっけ」なんて方も、北欧デザインと聞くとシンプルかつ色鮮やかで遊び心のある小物や服などのデザインが容易に頭に浮かんでくるのではないでしょうか。今や日本でもファンの多い北欧デザインですが、スウェーデンに移住し、その作り手として活動されている日本人の方がいます。リンショーピン在住のソーイングデザイナー、オルソン恵子さんです。


今回はオルソンさんが取り組まれている洋裁の魅力やモノづくりについて、そしてデザイナーから見た北欧デザインなどについてお話を伺いました。



*洋裁やソーイングという言葉に聞き馴染みのない方へ
洋裁とは洋服を作るための裁縫のことで、型紙を作って、裁断、仮縫い、本縫いといったプロセスを含みます。(和服を作る和裁に対する言葉)また、今回の記事でもよくでてくるソーイングとは広く裁縫のことを指す言葉です。




プロフィール


Keiko Olsson(オルソン恵子さん) 

仕立て屋を営む母の影響で小さいころからモノづくりに親しむ。14歳で初めてミシンを買ってもらって以来、高校時代は通学用バッグを自作するなど手芸に没頭。その後、地元福島から上京し文化服装学院にて本格的に洋裁を学び、在学中には某ミュージカル劇団の縫子としての経験も積む。その後、幼少期からの憧れであったイギリスへ留学、帰国後は婦人服の仕立業やブランドサンプル服の縫製に携わり、2008年にスウェーデンに移住。2010年からスウェーデンのリンショーピンにて、自らのアトリエ「Syateljé Keiko Olsson」を営んでおり、ソーイングのワークショップや企業へのデザイン提供、登録者数16万人を超えるYouTubeチャンネル「Keiko Olsson Sewing Channel」での発信など幅広く活躍している。

オルソン・恵子さん


オルソンさんに聞く洋裁の魅力とモノづくり


初めに、専門学校で本格的に学んでから現在に至るまで、長年洋裁に携わられているオルソンさんですが、洋裁の魅力は独特のモノづくりの過程と日々の生活における実用性にあると言います。


私は「何かを作ること」が全般的に好きなのですが、洋裁の場合は、平面の生地が立体になる面白さがあります。 さらにそれを生活の中で使って楽しめるというのは、素晴らしいことだなと思います。

針仕事のような細かい作業も好きですし、色合わせやデザインなどを考える時間も好きです。 昔から「職人さん」に憧れがあり、技術のいる洋裁という仕事は、職人的な仕事ではないかと思っています。

オルソンさん
オルソンさん


一つの作品が完成するまでに、細かい作業から全体を見渡して考える作業まで様々な技術が必要なんですね。オルソンさんが幼少期から手芸に親しまれていたことや、専門学校での学び、その技術を使った実務経験などがあるからこそできる職人技なのかもしれません。

そして、昔から職人的な仕事に憧れがあったというオルソンさんですが、モノづくりをするにあたってご自身がもつこだわりについても聞いてみました。

商品として製作する場合は、クオリティや使い勝手、丈夫になる工夫をして長く使ってもらえるような製品を目指してい ます。

教えること(チュートリアル動画やレッスンなど)では、ユニバーサルデザインのように誰にでも分かりやすい説明と作りやすさを心がけています。

デザイン的な面では、生地の配色やバランスにこだわっています。その柄が一番キレイに見えるように、というところから作品の形を考えることもあります。

オルソンさん
オルソンさん


作り手に加え、教える立場としても活動されているオルソンさんならではのこだわりですね。

ソーイングを教える活動の一つにご自身のYouTubeチャンネル「Keiko Olsson Sewing Channel」があり、日本だけでなく海外の視聴者も非常に多いとのこと。ソーイングのチュートリアル動画を中心に投稿されており、なかでも下記の動画は超初心者の筆者にもわかりやすく、マスク着用必須の毎日が続く今、非常に参考になりました。また、チャンネルには様々なレベルの動画があるので、初心者から経験者まで楽しめそうです!


一枚の布で出来る立体マスクの作り方



ソーイング初心者の筆者が選ぶおすすめ動画3選


①コースターの作り方

動画は5分と超簡潔!解説がわかりやすく作業もシンプルなので、これからソーイングを始めてみたいという方やもう一度基礎からやってみたいという方におすすめ!

コースターの作り方


②簡単おりがみトートバッグ

コースターよりはレベルアップ。それでも、縫う位置やカット位置がわかりやすく動画で説明されており、途中で挫折する心配はなさそうです。お弁当バッグとして使いたい!

簡単おりがみトートバッグ


③幅広マチのしずく型バッグ

見た目が良いだけでなく、いれるものによってマチの幅が自由自在という機能性がすごく便利!また、生地を裁断する際に使うパターン(型紙)を自分で書くのが難しいという方には、PDFのパターン(型紙)も販売中だそう。



製作のインスピレーションと北欧デザインについて


マスクやポーチ、バッグ、巾着、ブラウス等々オルソンさんのモノづくりは多岐にわたります。そんなオルソンさんはモノづくりのインスピレーションをどんな所から得ているのでしょうか?


スウェーデンに住んでいることがかなり作品作りに影響していると思います。主に、北欧のライフスタイル、映画や絵画などの芸術作品などでしょうか。

使っている材料は、ほとんどがスウェーデンの物ですし、インスピレーションも北欧デザインから湧くことも多いです。私の周りには、個人作家やブランドを持っている人が多いので、スウェーデン人のクリエーター達からも刺激を受けています。

オルソンさん
オルソンさん


アートやスウェーデンのライフスタイル、身の回りのクリエーターコミュニティなど様々なところからインスピレーションを得ているんですね。北欧デザインからインスピレーションが湧くことも多いということでしたが、動画内で紹介されている作品の中には「巾着」や「がま口ポーチ」など日本らしさが感じられるものもあり、スウェーデンのヴィンテージ生地と日本らしさの調和がとても魅力的でした。

また、一つ気になるのが、デザイナーの目から見た北欧デザインについて。オルソンさんは率直に北欧デザインにどういった印象をおもちなのでしょうか。


全般的に洗練されていて、無駄がない感じがします。テキスタイルデザインで言えば、絵画のようだなと思います。
草花などの植物、動物など自然のモチーフがデザインに使われていて、夏の明るい景色のようなカラフルさがあり、人々のライフスタイルにうまく馴染んでいるなと感じます。

オルソンさん
オルソンさん


確かに、言われてみると北欧デザインには自然がモチーフのものや明るい色調のものが多いですよね。都市部からも湖や森などの自然が比較的近いことや、暖かい夏への渇望の現れなのでしょうか。ちなみにオルソンさんのアトリエも緑豊かな自然公園の一角にあるそうですよ。


アトリエのことを少しご紹介


次に、日本とスウェーデンで仕事をされてきたオルソンさんに二つの国のソーイングやデザインについて比較して頂きました。どんな共通点や違いがあるのでしょうか?


ソーイングの共通点としては、家庭で使う物(インテリアや子供服)を作っている方が多い印象です。

ただ、テキスタイ ルデザインと素材感は結構違います。
スウェーデンの場合は、子供服にナチュラルなコットンニット素材を使うことが多 く、種類やデザインも豊富です。インテリア生地は、リネンなど厚手の素材が多く、デザイン性のある大柄が多いですが、日本はどちらかというと細かめの柄が多いような気がします。

これは、家のサイズやインテリアの文化の違いが関係しているのかなと、個人的には思っています。

オルソンさん
オルソンさん


なるほど。デザインや素材の面で違いがあるようですね。確かにオルソンさんがよく使われているスウェーデンのヴィンテージ生地にも、大柄のデザインがよく見受けられます。


DSC09126のコピー



誰かの役に立つこと、今後の挑戦


ここまで、モノづくりのこだわりやデザイナーとしての観点から見る北欧デザインなどについてお聞きしてきましたが、この仕事をするなかでオルソンさんはどんな時に幸せを感じるのでしょうか。また、今後はどんなことに取り組んでいかれるのでしょうか。


ワークショップで「楽しかった」など、ご感想をいただいた時や、YouTubeやSNSなどでレビューやコメントをいただい た時など。少しでも人の役に立てていることが嬉しいです。思い通りのデザインが形になった時も、やったー!と叫びた いほど嬉しいです(笑)

ソーイングのお仕事は、常に新しいデザインや企画を考えているので、飽きることがないんです。ですので、「今の仕事 をコツコツ継続してやっていくこと」が一番と思っています。他には、北欧の伝統的な刺繍や手工芸にも興味があります。 一昨年、ダーラナ地方のレクサンドで刺繍コースに通ったのですが、その学校には他にもたくさんのHemslöjd (手工芸)のコースがあり、いつかスウェーデンの様々な手仕事に挑戦してみたいなと思いました。

オルソンさん
オルソンさん


誰かの役に立てた時に幸せを感じると語るオルソンさん。アトリエでのソーイングレッスンなどはもちろん、YouTubeをはじめとするオンラインでの活動を心待ちにしている方もきっと多いはずです。また、現地の伝統的な手工芸にもご興味があるということで、将来どういった作品を作られていくかも非常に楽しみです。




最後に


今回はソーイングデザイナーとしてスウェーデンで活動されているオルソン・恵子さんにお話を伺いました。モノづくりへの姿勢やデザイナーから見る北欧デザインについての考察など、普段中々聞けない話も多かったのではないでしょうか。

個人的には、モノづくりのこだわりもそうですが、YouTube動画の非常にわかりやすい編集や一つ一つのチュートリアル動画に英語字幕を付けられている点など、すごく丁寧な仕事をされている印象を強く受けました。ちなみに、上で紹介した「一枚の布で出来る立体マスクの作り方」という動画には世界中の視聴者から800件近くのコメントが寄せられていて、「教えてくれてありがとう」、「今まで見たマスクの作り方の動画で一番わかりやすい」など称賛や感謝の言葉がたくさん見受けられます。動画を通して、オルソンさんの気遣いや思いやりが多くの方に伝わっているのかなと感じました。

オルソンさん、今回はお忙しい中、取材に協力して頂きありがとうございました!


オルソンさんについてもっと知りたいという方は、オルソンさんが書かれた自己紹介記事がnoteにありますので、そちらも是非チェックしてみて下さい!


【自己紹介】 スウェーデンで洋裁店を営む私の過去〜現在までを振り返ってみました。 

https://note.com/keiko_olsson/n/n85ce4589cf8f


オルソンさんのInstagram: @keiko_olsson  

オルソンさんのYouTubeチャンネル : Keiko Olsson Sewing Channel  

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