昨今のデジタル化の急速な発展で、電子決済やモバイル決済が主流になってきています。「キャッシュレス」などはもはや生活に馴染んだ言葉になってきているのでは?日本は他の先進国に比べ、こうした新しい技術への移行に遅れをとっているとはいえ、少しずつその利用者が増えているのではないでしょうか?
そんな新しいお金の概念についてスウェーデンに焦点を当てて見ていきましょう!
世界一キャッシュレスな国スウェーデン
スウェーデンがカード社会であることは広く知られていることで、実際にスウェーデンに行ったことのある方ならわかるかもしれません。スウェーデンはヨーロッパの中で初めて貨幣を導入した国(1661年)であり、なんと2023年には完全キャッシュレス化になると予想されています。
2023年なんて東京オリンピックが終わってすぐですよね。
スウェーデン国立銀行の報告によるとスウェーデン人の決済方法の多くはデビットカードのようです。
上の棒グラフ(過去一ヶ月間での決済方法)を見てわかるように、過去一ヶ月間での決済のほとんどがデビットカードで支払われています。それに2014年から2年おきの変遷を見ても、現金利用の割合は一貫して減っています。
つまり、スウェーデンでは現金離れが著しいんです!!
現金を持ち歩いていない人だって多くいますし、このキャッシュレス化の波は子どもたち世代にも広く認知されています。中には、紙幣を画像や博物館でしか目にしたことのない子もいるようです。
最近では現金を受け入れないカフェも多くあります。こうしたカフェでよく見かけるのは「kontantofri(cash-free:現金無効)」の文字。
グラフ2は過去一ヶ月間の年代別の決済方法の変遷です。
ここからわかるのは、
・どの世代をとってもデビットカード利用者が一番多い
・若い層になるほどキャッシュレスが進んでいる
年長者の現金利用はまだ根強いように見えますが、それでもデビットカードの利用率も8割りを悠に超えています。
認知度98%!?スウェーデンの決済アプリSwish
さてさて、グラフ1、2と見てきて一番右のバーには触れませんでした。Swish(スウィッシュ)という見慣れない文字にハテナを感じた人も多いのでは?
Swishはスウェーデンの大手銀行6社の共同開発によって作られた決済方法で、2012年からサービスがスタートしています。ポイントは銀行によって開発されていることで、直接取引が出来るんです。そしてその認知度かつアクティブユーザーはたったの2年半で300万人に!!
300万人ってそこまで多くないと感じるかもしれませんが、
「スウェーデンで!」
と捉えるとどうでしょうか?
人口1000万人の国(2015年当時は1000万人に満たない)の3割が同じアプリを使っている。
それだけ、急速に浸透していったんです。グラフ1からわかるように、2018年では6割以上のユーザーがいるということです。
Swishの何が便利かというと、電話番号さえあれば決済が出来るんです。取引する人、お店の番号を打ち込んで、金額を打てば終了。これだけで買い物が出来る時代なんですね。2017年からはQRコードも導入され、より簡略化しました。
お店などでの決済はもちろん、友人間の送金でも幅広く利用されています。子どもへのお小遣いもSwishを通してされることも多いんだとか。
将来日本でもSwishのような送金方法が主流になったらお年玉も電子送金になるのでしょうか、、?
現金を持ち歩く必要のないスウェーデン社会、スマホで簡単に決済、送金ができてしまうスウェーデン社会。日本ではまだまだ近未来的に思えるような社会ですが、冒頭のタイトル覚えてますか?
財布もスマホもいらない決済
最後に新しい、けどこれから主流になるかもしれない決済について考えていきます。バイオハックという言葉を聞いたことはありますか?
ハックと聞くとなんとなく悪いイメージがありますが、バイオハックとは、医療技術と電子技術を組み合わせて身体に器具を埋め込むことです。それにより人間の可能性を広げるという目的があります。
今回のトピックの場合は身体にチップを埋め込むことで財布もスマホも使わない決済が可能になります。スウェーデンではこの技術の研究が盛んで、現在3000人近いスウェーデン人(2017年)がすでにチップを埋め込んでいるようです。
(↑スウェーデン語音声、英語字幕)
SJというスウェーデンの国鉄で初めて導入されました。このチップの技術は決済だけでなくて鍵の役割になったりと可能性はまだまだ広がりそうです。
現金を使わないことはもう一昔前の話になりそうなスウェーデン。今後の期待される技術が生活にどんな影響を与えるのか、目を離せませんね。
参考:
↓スウェーデン国立銀行報告書(2018年)
↓Swishホームページ
↓スウェーデンのキャッシュレス社会概要
↓スウェーデンのキャッシュレス事情
https://interestingengineering.com/sweden-how-to-live-in-the-worlds-first-cashless-society
↓バイハックについて
https://qz.com/1313537/biohacking-in-sweden-why-thousands-are-inserting-microchips-into-themselves/
文筆家、写真家、イラストレーター。学部時代のスウェーデン留学が大きな転機となり、北欧のウェルビーイングを身体で学ぶべく、ノルウェーとデンマークの大学院に進学。専門は社会保障、社会福祉、移民学。2021年6月両国にてダブルディグリーで修士号取得後、帰国。現在は、アニメーション業界に飛び込み、ストーリーテリングの観点から社会へ働きかけるべく活動を広げている。フリーランスとしても活動している。又、北欧情報メディアNorrから派生した「北欧留学大使」を主宰し、北欧留学支援もしている。
■これまでの活動歴:「令和未来会議2020”開国論”(NHK)パネリスト出演」、「デモクラシーフェスティバル2020(北欧5カ国大使館後援)イベント主催」、その他講演多数