お菓子を通してfikaを広めたい
Norr取材企画第2弾です。今回は東京・豪徳寺にあるFikafabrikenさんにお話を伺いました。豪徳寺といえば、招き猫で有名な「豪徳寺」があり、観光客で賑わう街。小田急線「豪徳寺」、東急世田谷線「山下」が交差する立地に構えるFikafabriken。
直訳すると、「お茶の時間工場」
fika(フィーカ)といえばスウェーデン人にとって最も重要な時間の1つですね。そんなfikaをテーマとしたカフェ。
その想いに迫ります。

本日はFikafabrikenさんについて色々お聞きしたいと思います!
よろしくお願いします。
はい、よろしくお願いします。
まず、Fikafabrikenを創業するにあたっての経緯についてお聞かせください。
そうですね、最初のきっかけになったのは、大学1年生のときにカフェの立ち上げメンバーとして関わった経験です。大学の近くにあるカフェで、学生主体だったのですが、そこで商品企画のリーダーを務めさせていただいたんです。周りのメンバーは3.4年生が多かったのですが、オーナーから「せっかくだからリーダーやってみたら?」と後押しされてやることになりました。
大学1年生でカフェの経営に関われるって貴重な経験ですね!
あの時の経験は今も役立ってます。私は商品企画を担当していたので、業者へ電話したり経費計算をしたりしてました。大変な仕事でしたが、すごく貴重な経験をさせてもらいました。カフェ設立当初は全然お客さんが来なかったのですが、少しずつ広まっていって知名度が上がっていくのが嬉しかったです。ここでの経験から自分でも何か持ちたいなと思ったのが、1番のきっかけですね。
なるほど、商品企画をしていく中でお菓子も作っていたんですね。
そうなんです。もともとお母さんの手伝いで料理はしていたのですが、基本的に独学で作ってました。
スウェーデンのfika、そしてカフェとの出会い
Fikafabrikenさんを設立する動機についてはわかったのですが、それがスウェーデンのfikaとどんな関わりがあったのですか?
そのカフェで3年生まで働いていたのですが、3年生の夏からスウェーデンに1年間留学してました。
留学されていたんですね!スウェーデンを選んだのには理由があったのですか?
教育学部だったのですが、小さい頃から家族と海外によく行ってて、特にイギリスに憧れがありました。1年生の夏にイギリスに短期で留学もしたりして、もっと長期で留学したいって思ったんです。でも当時の英語力とかを考えるとなかなか難しくて、それでたまたま見つけたのがスウェーデンだったんです。あんまり北欧に行く機会ってないなって思って。
僕も同じような理由でスウェーデンを選んでました(笑)
なのでfikaを知ったのは留学中です。Espresso Houseという、日本でいうStarbucksみたいなカフェがあってそこに行ってみると、老若男女問わず多くの人がその時間を楽しんでいました。新聞を読みに来る年配の方もいれば、友達とfikaを楽しんでいる人もいて、それぞれの時間を楽しんでいて、そういう空間が好きだなって思ったんです。そこから色んなカフェにいくようになりました。
Espresso House懐かしいです(笑)僕も留学中よく行ってました。
スウェーデンでは日本みたいに学生がアルバイトするのは当たり前ではないので、時間がたくさんあってその時間を使って寮でよくスウェーデンのお菓子を作ってました。
そうだったんですね。確かに、スウェーデンの学生は良い意味で暇で自分のために時間を使うことができますよね。そこで日本でのカフェの経験が生きたわけですね。
起業までの道のり
Fikafabrikenさんが設立されたのが2017年ということですが、留学から帰ってきてどんな流れでオープンするに至ったんですか?
留学後すぐ起業の準備をしたわけではないんです。何か自分でも持ちたいなと思ってはいましたが、必ずしも店舗を持つということではなかったんです。帰国後は知人のツテで都内にあるスウェーデン料理店でアルバイトしていました。スウェーデン大使館とコネクションのあるお店だったので、ケータリングでよく大使館へ行ってました。この経験が今にも生きてます。それと、個人のお店だったので、色々と自由にやらせてもらえて、定休日の日曜日を利用してカフェを開いたりしてました。
帰国後もお菓子を軸に色々と活動されてたんですね。
やっぱりカフェの経営が好きなんですね。同時期に就活もやっていましたが、当時を振り返ると就活にあまり打ち込めていなくて、それでいてカフェが楽しくて色々と悩んでいました。就活をやる傍ら、「Fikafabriken」って名前で活動を始めました。これが始まりですね。名前はスウェーデンの友達から付けてもらいました。
なるほど、「SINCE 2013」ってロゴに書いてあるのは、「Fikafabriken」という名前を使い始めた年で、店舗を持ったのは2017年ということなんですね。
そうなんです。名前を付けた当初は、あくまでもアルバイト先のお店の一環として自分でやりたいっていう感じでした。イベントに出店させていただいたり、そこでお菓子が売り切れたりするのが楽しかったんです。
今のところ店舗の構想はまだ出てきていないのですが、いつから考え始めたのですか?それと就活はどうしたんですか?
店舗オープンはもう少し後になってからで、就活は途中で辞めました。それと大学卒業後も社会的な身分があった方が良いということで大学院にも通っていました。
大学院にも通われていたんですね。
結局1年間通って辞めてしまいましたが。3月に大学院を辞めてから、無職になって、たまたま周りに経営者が多かったのでそこで起業をすることにしたんです。6月に起業したのですが、当時はアイシング教室の先生だったりとか、お菓子の経験を利用して教室を開いたりしていければなと思ってました。
会社を作ったということなんですね!それは知りませんでした。
それでその秋頃に、都内の大型商業施設での出店の声が掛かってこれが店舗オープンのきっかけだったように思います。幸いクリスマスの時期と被っていてたくさんのお客さんにお菓子を届けられたのが嬉しかったです。立て続けに翌年のバレンタインのイベントにも出店させていただけました。ただ、やっぱりこういうイベントでの出店となると時間的な制約が大きくなってしまって、それが少しやりにくいなって思ったんです。
そんな中、当時手伝ってくれていた友達から「自分で拠点を持って、自分のペースでやっていけばいいんじゃない?」ってアドバイスをくれて、これがこの店舗を立ち上げるきっかけになりました。
確かに店舗を持つことはそこから出られなくなるという見方の反面、自分のペースでできるっていうメリットもありますね。
そうなんです。紆余曲折を経て、2017年7月にようやく店舗オープンに至りました。
大学1年生のカフェ立ち上げから始まって、留学、アルバイトを経験してその集大成とも言えるのがこのFikafabrikenさんということなんですね。
大学院を3月に辞めてから、起業したのがその年の6月。そこから商業施設でのイベント出店を経験して、その翌年の7月に店舗をオープンしたということになりますね。
なるほど。この店舗ができるまで色々と経験されていたことですね!

店舗へのこだわりとは?
続いて、実際のFikafabrikenさんの店舗についてお聞きしたいのですが、まずなぜ豪徳寺を選んだのですか?
母校が豪徳寺の近くにあって、それで想い入れがすごくあるんです。だからここに決めました。
なるほど、昔から馴染みのある街だったんですね。何か大切にしている世界観とかってありますか?
あんまりこだわりを持たないことですかね。私がやりたいことはfikaの文化を広めていくことであって、必ずしもスウェーデンのお菓子を広めることではないんですよね。だから、このカフェで作っているお菓子は全部スウェーデンのお菓子ということではないんです。美味しいものを作ってみんなでfikaをしながら共有したいと思うので、これまで美味しいと思ったお菓子は作っていますし、これから旅行した時とかに出会った美味しいお菓子は作りたいと思ってます。
ということは店頭で売っているお菓子は色々変わっていくということですか?
そうですね。新商品の試作が好きなので色々作ってます。ただ、やっぱりスウェーデンでの経験が大きいので、シナモンロールとキャロットケーキは毎日作るようにしてますよ。

日本でスウェーデンのお菓子を食べられるところってあんまりないですよね。
オープンしてから2年ほど経ちますが、fikaは浸透してる実感はありますか?
fikaって目に見えない文化であるからこそ、広めるっていうのがなかなか難しいんですけど、それでもお客さんから「これでfikaするね」って言って買って行ってくれた時はすごく嬉しいです。自分が作ったお菓子で人を笑顔にできることがすごく力になってます。
お客さんの言葉、笑顔がやりがいに繋がっていくんですね。
今後のビジョンは?
今後の店舗展開であったり、これからのFikafabrikenさんはどうなっていくんですか?
あんまり店舗拡大しようとは思っていなくて、あるとしたらスウェーデンで拠点を持つことです。スウェーデンでのお菓子をたくさん食べてきたので今度は日本の和菓子の文化を広めていくのも面白いかなと思ってます。
でもやりたいことはいっぱいあります。スウェーデンのカフェってお菓子だけじゃなくて、パンもあれば食事もできたりすんですよね。そういう意味でフードの幅をもっと広げていきたいと思ってます。
色んな角度からfikaを楽しめる空間になっていくんですね。楽しみです!
スウェーデンへの想い
これまで店舗に関連したお話をたくさん伺ってきましたが、少し離れてお聞きしたいと思います。関口さんはスウェーデンでの経験が大きいとおっしゃっていましたが、その良さってどんなところにあると考えていますか?
私が考えるスウェーデンの良さっていうことですね。色々ありますが、1つには流行りに流されないで、自分の時間を大切にすることです。これは自分の好きなこともしっかり持っていることにも繋がっているなと思います。
確かに自分を大切にする人が多いなとすごく感じますね。
そうですよね。あとは働くことに対して根本的に考え方が違うなあと思います。日本だと仕事が終わらないから残業するって人が多いと思うんですけど、スウェーデンだと給料が2倍になる残業する、土日も働くって聞いたことがあって、そういう根っこの部分で考え方が違うんだなと感じてます。
働くってことに対してすごくポジティヴに感じますね。僕も楽しそうに働いている人がすごく印象的でした。そういう意味で仕事とfikaは密接に関わっている気がしますね。関口さんにとってfikaってどんな時間ですか?
私にとってfikaは、忙しい時こそ必要な時間だと思っています。一度やっていることの手を止めて、コーヒーやお菓子と一緒に会話をする。簡単そうですが、つい忘れてしまいがちな時間こそ大事だなぁ、と。
ふとfikaしているときの会話の中でアイデアが生まれたり、モチベーションに繋がることが多々ありました。なので、休むことの勇気や大切さを広げていけたらなと思います!
日本語にも英語にも訳せないfikaってやっぱりそういう時間なんだなあと改めて感じました。単にコーヒーとお菓子を囲んでゆったりするんじゃなくて、そ子での会話が大切ですよね。何か新しいアイデアが生まれる時って心も体も休んでいる時が多い気がします!
やりたいことを形にする、ということ
最後に1つ伺いたいと思います。これまで様々な経験をされてきた関口さんが思う、「起業」するにあたってのアドバイスってありますか?
「起業」って思っているほど遠い存在じゃないんだなって今になって思います。起業しても大変なのはそれを続けることなんですよね。続ける覚悟があれば一歩踏み出すべきだと思います。立ち上げ段階では手助けしてくれる人がたくさんいるんです。でも、それを形として続けていくのは自分がどうしたいかが大きくなってきます。楽しいことばかりではなくて、明日お客さんが来なかったらどうしようって毎日不安と闘ってます。だから私の作ったお菓子で笑顔になってくれた時はすごく嬉しいんです。今は何人か従業員として働いてくれていますが、あくまでも意思決定は私なので、何か決断するときは不安ですね。
先ほどから伺ってきた創業動機の裏にある苦労がヒシヒシと伝わってきました。今日は貴重なお時間ありがとうございました。
こちらこそありがとうございました!

自分の作ったもので人を笑顔にしたい
「お菓子を作ることと売ることは違くて、お客さんが笑顔になるにはどうすればいいか必死に考える。せっかくなら自分の好きなことに頭を使いたいんです。」
こんな想いが今年行ったクラウドファウンディングに表れているのかもしれない。
ロゴに描かれている少女は世界中の美味しいお菓子を日本に届けてくれるでしょう。
「ふぃーかってなに?」
その答えはきっとここにあるはず。
[Fikafabrikenさん詳細] *取材時の情報です
●営業時間:
12:00〜19:00
定休日:火水
●公式情報:
Instagram:@ai_fikafabriken
https://www.instagram.com/ai_fikafabriken/?hl=ja
●住所:
〒154-0021 東京都世田谷区豪徳寺1丁目22−3

文筆家、写真家、イラストレーター。学部時代のスウェーデン留学が大きな転機となり、北欧のウェルビーイングを身体で学ぶべく、ノルウェーとデンマークの大学院に進学。専門は社会保障、社会福祉、移民学。2021年6月両国にてダブルディグリーで修士号取得後、帰国。現在は、アニメーション業界に飛び込み、ストーリーテリングの観点から社会へ働きかけるべく活動を広げている。フリーランスとしても活動している。又、北欧情報メディアNorrから派生した「北欧留学大使」を主宰し、北欧留学支援もしている。
■これまでの活動歴:「令和未来会議2020”開国論”(NHK)パネリスト出演」、「デモクラシーフェスティバル2020(北欧5カ国大使館後援)イベント主催」、その他講演多数