Norr取材企画第三弾は、フィンランドセンターにお伺いしました。
フィンランドセンターは、学術、文化、そして高等教育の面で日本とフィンランドの相互協力を促進する機関で、チームフィンランド(フィンランド大使館、ビジネスフィンランド、フィンランド商工会議所含む)の一員として、日本とフィンランドの懸け橋となっています。
フィンランドといえば、世界で最も優れた教育システムをもつ国の一つとしても有名で、昨今日本でも注目されています。
今回はフィンランドのタンペレ大学へ留学された経験を持ち、現在はフィンランドセンターでアカデミックリサーチ・コーディネーターとして勤務されている原さんに留学を通して気付いたフィンランドと日本の教育の違いやフィンランドセンターでの働き方についてお話をお聞きしました。
フィンランドセンターと原さんのお仕事について
フィンランドセンターと原さんのお仕事について少しご紹介頂いてもいいですか?
フィンランドセンターは3つの領域に主眼をおいて二国間の交流を促進する機関で、その3つの領域というのが、学術、文化、高等教育です。そのなかでそれぞれが担当のプロジェクトを進めているといった感じです。
私は、主に日本にいる学生に対してのフィンランド留学の情報の提供や、日本とフィンランドの大学と研究者の方々の交流の促進をしています。
ではフィンランドセンターがフォーカスしている3つの領域(学術、文化、高等教育)の中だと、原さんの担当は高等教育になるんですかね?
主な仕事はそうですね。ただ、一つの仕事でも複数の領域に跨っていることも多いので、高等教育に関連する学術の面も見るようにしています。
というのも、高等教育というと大学や大学院なのですが、そこだけ見ていても「木を見て森を見ていない」ということになりますよね。フィンランドの教育や社会がどういったことを重視しているのか、どういった過程を経て子供たちは成長して大学で学びを得るのか、また、生涯教育ということで年齢に関わらず大学で学ぶ人達もいるので、そうした社会全体の流れを見ながら、サポートをできるようにしています。
では仕事の中で3つの領域が独立しているのではなく、しっかり繋がっているんですね。
そうですね。
あとは、より幅広い方々にフィンランドの魅力を知って頂きたいという思いがもちろんあるので、最近だと全国からフィンランドに行きたい方を公募して、フィンランドの南カレリア地方・ヨウツェノでカルチャー留学を実施しました。フィンランド語や伝統的なスモークサウナ、湖で実際に泳ぐ体験などを通して、フィンランドの文化を幅広く知って頂けるそういったプログラムを企画したりもしています。
現地での体験は何よりですね。
原さんが3つの領域の中で幅広くお仕事されているのがわかりました!
原さんのフィンランド留学について
学生時代のフィンランドへの留学が現職に繋がっているということですが、
原さんは大学のプログラムを通してフィンランドに留学されたんですか?
いえ、在籍していた大学に北欧の大学への留学プログラムがなかったので、留学先を自力で調べて申し込みをしていきました。なので、留学先を選ぶ自由度は高かったですね。
そうだったんですね。
留学先を決める自由度が高いなかで、なぜフィンランドを選ばれたんですか?
一つ目の理由は、外国人でも学費が無料だったことです。残念ながら現在は日本から英語で留学する場合、学費が有償なのですが、当時は無料だったんです。
二つ目は、自分の研究分野が社会政策、特にそのなかでも外国人政策だったことです。「なぜ自国民だけでなく、外国人にも無料で大学の教育を受けさせてくれるのか」ということに興味をもちましたし、自分の研究テーマにもなると考えてフィンランドの大学に決めました。
原さんは自力で留学先を探されたみたいですが、留学先が決まった後どうやって留学先の情報を探されたんですか?北欧留学についての情報って、アメリカやイギリスなどの留学先に比べてかなり少ないですよね?僕はスウェーデン留学以前、情報が少なくて不安だったのを覚えています。
確かに情報は少なかったですね。でも、私の留学先は留学生をサポートするチューター制度というのがあって助かりました。
留学先大学に合格後、大学から各留学生に一人現地学生を紹介してもらえて、
留学前から現地の生活までサポートしてくれます。留学前の悩みから現地の最寄り駅までの送り迎え、銀行口座の開設方法や履修登録の仕方など、わからないことがあればその都度教えてくれますし、向こうでの生活が落ち着いた頃には、その学生たちと遊んだりもしましたね。
かなり手厚いサポートで、それなら安心できますね。
原さんが感じた「教育面での日本とフィンランドの違い」と「学生の主体性」
教育面でフィンランドと日本の違いを感じたことはありますか?
評価方法がクラスによって本当に多種多様だったことですかね。日本でもあるプレゼン、筆記試験、レポートなどに加えて、クラスで学んだことを学生が自由に表現して、最後のクラスで皆で見せ合う「ポートフォリオ(Portfolio)」、授業はなく課題図書を読んで、それに関するテストを受ける「ブックイグザム(Book Exam)」、講義を聞いてそれに関する日記を書く「ラーニングダイアリー(Learning Diary)」などがありました。
授業内だけでなく、授業外で自ら学んだことについても自由に表現できる環境で、「こんなにクリエイティビティを自由に表現していいんだ」と思いました。
本当に様々ですね!初めて聞く評価方法ばかりです。
あとは、現場を訪れて実践的な学びを得る機会が多かったことと大学のネットワークがすごく広かったことも印象的でした。
移民難民政策の授業では、ソマリア難民の方々の難民シェルターに実際に行って交流したり、授業によっては、更生施設の見学やエストニアまで行って刑務所を見学した授業もあったそうです。
それから、タンペレ大学では、タンペレ地域にある他大学の授業も履修可能だったので、私はタンペレ応用科学大学での授業も履修していました。
教室内の議論だけじゃなくて、実際の体験を通してより理解を深めていくんですね。それから留学生でも現地の他大学の授業を履修できるのは、とても寛容で良いですね。
ちなみに、日本人学生とフィンランド人学生の違いは何かありましたか?
当時の私の経験からの個人的な意見ですが、フィンランド人学生の主体性の高さは感じました。
それは年齢関係なく「行き止まりがない」と言われるフィンランドの教育システムと関係しているかもしれません。フィンランドでは高校卒業後すぐに大学進学しなくても、誰でも希望すれば夏季大学やオピスト(国民成人学校)等の機関で学ぶ機会が与えられていて、その人が本当に学びたい時に学ぶことができます。
なので、当時のクラスメイトの年齢も様々で、なかには4人の子を育てながら大学に通っているお母さんもいてかなり新鮮でした。
その人が本当に学びたい時に学ぶことができるのは良いですね。
原さんがフィンランドの学生の主体性が高いと感じられたのも納得です。
「仕事だけが人生じゃない」 フィンランドセンターでの働き方
現在原さんはフィンランドセンターで働かれていますが、「フィンランドに関わる仕事がしたい」という想いは以前からあったんですか?
そうですね。フィンランドに関わる仕事がしたいとはずっと思っていました。留学は当時の自分の考え方や価値観を良い意味で変えてくれた経験だったので、フィンランドに恩返ししたいという気持ちもありましたし、
日本の皆さんにフィンランドを通じて、変わるきっかけや何か新しいものを感じてもらえるようお手伝いできればと思っていました。
そうなんですね。
北欧に関する仕事に興味がある方は多いと思うのですが、実際に機会を見つけるのは難しくなかったですか?
そうですね。
もし北欧系の組織での仕事に興味があるのであれば、常にポジティブにアンテナを張るということは大事かもしれませんね。
原さんは日系企業でのお仕事のご経験もあると伺いましたが、フィンランドセンターでお仕事をするうえで感じる違いはありますか?
客観性をもって仕事をすることはより意識するようになりましたね。というのも、フィンランドセンターは少人数の組織で仕事における意思決定のスピードが早いので、私が提案したアイデアがそのまま組織の意向になったりすることも多いです。なので、客観的に考えるというのは働くうえでより意識するようになりました。
勤務時間など「働き方」という部分で考えると、これまでのご経験と比べてどうですか?
現在の仕事は9:00~17:00の勤務で基本的に残業はなしです。もちろん仕事中は100%以上のアウトプットが求められますが、仕事だけが人生ではなくそれぞれ他の生活もあるということで、決められた時間にきっちりと仕事をして帰るというのが基本ですね。
そうなんですね。
残業で家に帰るのが遅くなる人も少なくないと思うので、一人一人の仕事以外の面まで尊重されている職場というのはすごく良いですね。貴重なお話ありがとうございました!
今回はフィンランドセンターの原さんにご自身のフィンランド留学の体験やフィンランドセンターでの働き方やお仕事についてなどたくさんのことをお聞きしました。日本とフィンランドの懸け橋としてフィンランドセンターでお仕事をされている貴重な原さんのお話は、参考になる方も多いのではないでしょうか!
より詳しくフィンランド留学についての情報を知りたい方、留学相談をしたい方は、
下記のアドレスからフィンランドセンターへお問い合わせください。
science@finstitute.jp
また、フィンランドセンターでは今後も様々なイベントが予定されているので、イベント情報や詳細につきましては、フィンランドセンターのウェブサイト、Facebook、Instagram、 Twitterをフォローしてお見逃しのないように!
フィンランドセンター
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スウェーデンで約一年間過ごした後、’’日本にはない価値観を届けよう’’と、RenとNorrを開設。
世界最北端の都市を訪れたり、北極圏でトレッキングしたりと冒険が生き甲斐。