こんにちは、NorrライターのRenです。ノルウェーの都市スタヴァンゲルで暮らしているのですが、先日石油博物館に行ってきました。そこで学んだことをブログという形で共有していきます。
ノルウェーといえば、北欧の中でもとりわけ物価が高いとよく言われていて、僕自身ノルウェーで生活をしていてよく感じます。500mlのコーラが300円することなんて当たり前(日本の倍ですね)。EUにも加盟しておらず、北欧の中でも独自路線を走るノルウェー。この背景に石油産業があることは間違いありません。昨今関心が高い環境問題と合わせてノルウェーの石油産業について考えていきます。まずは、クイズを通してノルウェーの石油産業について見ていきましょう。
ノルウェーが油田を発見したのはいつ?
1969年12月23日に発見しました。「クリスマスの贈り物」と言われていて、今でもノルウェー人にとって忘れられない日です。ノルウェーを大きく変えた歴史的な日であったと言えます。
ノルウェー人が石油産業で働く割合は?
ノルウェーの生産年齢人口の中での割合です。石油産業の定義によって従事者の数値は変動しますが、おおよそ24万〜33万人だと言われています。
ノルウェーのGDPのうち石油産業はどれくらいの割合?
ノルウェーから排出される温室効果ガスのうち石油産業からの割合は?
より厳密な数値は28%です。これはノルウェーの温室効果ガスの出どころとして一番高いです。それに続いて、それぞれその他の産業(23%)、道路交通(車、バスなど)(17%)、その他交通手段(電車、飛行機など)(13%)、農業(8%)、その他(エネルギー供給など)(11%)となっています。
ノルウェーのGDPに占めるODA(政府開発援助)の割合は?
ノルウェーはOECD諸国でもGDPに占めるODAの割合が最も高い国の1つです。国際連合の取り決めでは少なくとも0.7%を拠出するよう目標立てられましたが、これを達成している国は5カ国だけです。2016年の国民一人当たりのODAではノルウェーは世界で一番支援している国で、総額のランキングでは530万人の小国でありながら9位にランクインしました。
何問正解できましたか?
どれだけノルウェーが石油産業と密接に関わっているかがわかったかと思います。
ノルウェーはGDPの3割も占めるほど経済的に石油産業に依拠しています。一方で、その石油産業からの温室効果ガスの排出量が一番多いのも事実。これからの地球環境を考えていく上で、ノルウェーは大きな局面にいます。いわば国家財政に関わる大きな決断を迫られているということ。事実、ノルウェーの政治団体や青少年の団体は石油採掘からの撤退を呼びかける声も大きい(下から2つ目の問題の写真参照)。ノルウェー政府として環境に配慮した産業開拓を試みている可能性は高いです。しかし、労働人口の13%の人の雇用を創出できるかが大きな問題。同時に、北欧の中でも特に盤石な社会福祉をいかにして維持していくかも難題です。
ノルウェーは世界でも最も高いと言われている炭素税を導入しています。日本ではあまり知られていませんが、ノルウェーはじめ多くの北欧諸国は国際社会へ援助活動を盛んに行なっています。その1つの指標となるのが、ODA。国としての総額で見たとき、小国である北欧諸国は芳しくありませんが、一人当たりに換算すると上位にランクインします。先ほどのクイズの5問目でもありましたが、一人当たりのODA援助額(2016年)は世界で第1位。この額は2位のルクセンブルと大きく差をつけていて、日本の額の10倍以上にもなります。一人当たりで見た時、他の北欧諸国はスウェーデン(3位)、デンマーク(5位)、フィンランド(10位)、アイスランド(12位)です。
ノルウェーが直面するこの石油産業の大きな課題。33万人の雇用をいかにして生み出し、現状の財政にあった状態を作ることができるか。ここがポイントになってくるのかと思います。
日本からはるか遠くの問題として他人事のように感じるかもしれませんが、日本にも置き換えることができます。2011年を皮切りに事あるごとに議論がされている「原発問題」。もちろん身体的状況や環境への負荷を考えたときに、稼働をやめるべきなのは目に見えているのですが、そこで従事している人たちの雇用はどうなるのか?そこまでデザインする必要がありますよね。
それに昨今ホットな話題としてTVやネットを騒がせる「AI(人工知能)」。シンギュラリティー(AIが人間の知能を超えるとされる転換点)という言葉も知られるようになって、雇用が脅かされる可能性がある人も多い。自動運転なんかはわかりやすいですが、タクシードライバーの職はどうなるのか?
少し脱線してしまいましたが、ノルウェーの環境問題も人ごとではなく、日本の社会問題にも置き換えることができるのかなと思いました。環境先進国としても名高い北欧諸国の一員であるノルウェーとその石油産業の関係は今後とも追っていきたいトピックです。
参考:
※クイズは原則石油博物館からの資料を元にしています。
外務省HP:世界各国のODAについて
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/jisseki.html
文筆家、写真家、イラストレーター。学部時代のスウェーデン留学が大きな転機となり、北欧のウェルビーイングを身体で学ぶべく、ノルウェーとデンマークの大学院に進学。専門は社会保障、社会福祉、移民学。2021年6月両国にてダブルディグリーで修士号取得後、帰国。現在は、アニメーション業界に飛び込み、ストーリーテリングの観点から社会へ働きかけるべく活動を広げている。フリーランスとしても活動している。又、北欧情報メディアNorrから派生した「北欧留学大使」を主宰し、北欧留学支援もしている。
■これまでの活動歴:「令和未来会議2020”開国論”(NHK)パネリスト出演」、「デモクラシーフェスティバル2020(北欧5カ国大使館後援)イベント主催」、その他講演多数