今年の4月初旬にノルウェーのホーコン王子が公務でフィジー共和国に訪問したそうです。その訪問に際してフィジー側から王子へ請願書が送られたそう。その内容は一体どんな内容だったのでしょうか?
ライターRenが全文を翻訳してみました。
※公的な翻訳経験はありません。大まかな内容をお伝えすることを今回の記事の趣旨としています。
ノルウェー王子 マグヌス・ホーコン殿下
初めまして、ようこそおいで下さいました。フィジー国への歓迎を込めた心からのご挨拶です。
この度、殿下が我々の島と南国ならではの数多くの景観をお楽しみいただくであろうと存じ上げます。
ご多忙のスケジュールの中、フィジー政府とお会いするお時間がありますようで、一つ慎みながらご請願を申し上げます。
フィジー共和国現首相が殿下をお迎えする演説にて、「フィジーとノルウェーは対極の位置関係にあります。」と述べられておりました。しかしながら、気候変動という点においては近い関係にあります。地球の一部地域から排出されるとめどない二酸化炭素は国境を越えた課題であり、気候の不安定さを表すものであります。二酸化炭素が懸念される点に関して、物理的な距離というものはもやは障壁とは言えません。多くのサンゴ礁が白化していることがすでに知られているように、海洋というものは距離による暴政をつなぎ、又、排出される二酸化炭素を隔たりなくつなぎ合わせてしまいます。
いち早く正式にパリ協定に批准した産業国家の一つとして、私をはじめ多くの人々はノルウェー国に対して敬意を示しております。しかしその一方で、貴国が一部北極海における石油と天然ガスの採掘を進めていることも我々は周知しております。これは本質的にはパリ協定が規定する二酸化炭素削減目標に傷をつけることでもあります。
北極海での油田開発はパリ協定に反する行為であるだけでなく、ノルウェー国憲法第1121条に規定されている、「ノルウェー国はこれからの世代が安全で健康的な環境を保有する権利を保障する」という要項に反する行為でもあります。
フィジー国においても同じような権利を保障することが、憲法第40条で規定されています。
ノルウェー国の一兆ドルという君主の富は、株式市場ではなく、石炭産業から一歩引くための再生可能エネルギーに対する画期的な投資になると宣言されました。これは非常に歓迎すべきことです。
殿下がこれからフィジー国を後にするにあたって、ノルウェー国が排気ガス削減に向け邁進し、化石燃料採掘からの撤退を直ちに遂行することで、我々の豊かな土地をこれからも保持していくために手を貸していただけることを我々は心より所望します。
原文全文:
Your Royal Highness Haakon Magnus, Crown Prince of Norway.
Ni Sa Bula Vinaka Saka and humble greetings of welcome to our home of Fiji.
No doubt you will be enjoying the flavour of our island home and the many sights, sounds of our paradise.
As you meet with the Government officials with your busy schedule set out for the day, there is but one modest request.
The Fiji Prime Minister has stated in his welcome address that Fiji and Norway “may seem to be polar opposites.” But climate change brings us closer together. Unfettered carbon emissions from one part of the globe presents trans-boundary challenges and climate insecurity in another. Distance is no longer a barrier where carbon emissions are concerned. The ocean also connects the tyranny of distance and is the highway that links the contagion of the excesses of carbon, as we can already see from coral bleaching in many coral reef systems.
While many like me applaud Norway as one of the first industrialised nations to formally ratify the Paris Agreement, we also know that it is also actively involved in further opening up its part of the Arctic for oil and gas exploration. This would essentially undermine the Paris Agreement’s decarbonisation goal.
Oil drilling in the Arctic not only runs foul of the Paris Agreement, but also Norway’s own constitution §1121, which states that the “State of Norway shall ensure future generations the right to a safe and healthy environment.”
The Fiji Constitution is supposed to guarantee similar rights in section 40.
Norway’s $1T largest sovereign wealth fund has also announced ground-breaking investments in renewable energy not listed on stock markets, and an intention to divest from coal companies. This is very welcome.
As you leave our shores Your Royal Highness, may we respectfully plead that Norway helps us in the Pacific to retain our proud, rich place in the world, by moving swiftly to eliminate exported emissions and de-escalate fossil fuel extraction.
この請願書を送ったのは、国民連邦党(NFP)の副代表であるセイニ・ナボウさん(Seini Nabou)。女性政治家としてマルチに活躍されており、国民連邦党の中心となって活動している方です。
ノルウェーは1960年代に北海油田開発を始めて、1969年に油田の発見に至りました。かつて貧しい国とされていたノルウェーはこれを機に、今では世界で最も裕福な国へと変わりました。
男女平等、人権、報道、幸福度、、様々な分野で世界の先頭を走っているノルウェーにも環境問題という全地球人の問題を同じように抱えています。オイルマネーが潤沢にある数少ない国として今後の動向には目を離せません。
化石燃料に乏しい日本人であっても、同じ問題意識を持ってどう動くかが今後も大切になってくるでしょう。スウェーデンの若き環境活動家グレタ・トゥーンベリさんをはじめ、世界各地で年々盛んになっている環境運動。下の写真のような美しい自然、いまの子ども達の世代にどんな地球を残すことができるのか、僕たち日本人も真剣に考える必要があるように思いました。
参考:
フィジーからノルウェー王子への手紙について取り上げられたオンライン記事:
ノルウェー王家オフィシャルHP:フィジーへの公務の記録
https://www.royalcourt.no/nyhet.html?tid=168964&sek=27262
文書冒頭の挨拶(フィジー語)で参考にしたサイト:トーホートラベル
https://www.tohotravel.com/p/fiji/info/language
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文筆家、写真家、イラストレーター。学部時代のスウェーデン留学が大きな転機となり、北欧のウェルビーイングを身体で学ぶべく、ノルウェーとデンマークの大学院に進学。専門は社会保障、社会福祉、移民学。2021年6月両国にてダブルディグリーで修士号取得後、帰国。現在は、アニメーション業界に飛び込み、ストーリーテリングの観点から社会へ働きかけるべく活動を広げている。フリーランスとしても活動している。又、北欧情報メディアNorrから派生した「北欧留学大使」を主宰し、北欧留学支援もしている。
■これまでの活動歴:「令和未来会議2020”開国論”(NHK)パネリスト出演」、「デモクラシーフェスティバル2020(北欧5カ国大使館後援)イベント主催」、その他講演多数