NorrライターのRenです。
僕はこれまで散々「北欧、北欧」と言ってきました。北欧情報メディアNorrもあくまでも北欧という“地域”がテーマ。
世間的にも「北欧」という枕詞が使われる。雑誌の特集なんかでも「北欧家具」「北欧雑貨」「北欧風〇〇」なんていうのはよく見かけますよね。
世界中見渡しても”北欧”よりも知られている地域ってほとんどない気がします。あ、待って。東南アジアがいた。
でも、東南アジアこそ宗教も違えば歴史的背景も大きく異なるので、ごっちゃにするのは危険そう。
本当は北欧なんて言葉使いたくない。
Norrの記事でも書きましたが、そもそも北欧って一口に言っても定義付けが難しいですよね。その人の文脈によって包括する国がかわってくるので。スカンジナヴィアとノルディックの違いなんか良い例ですね。
「北欧は兄弟みたいな関係」っていう表現がよくされます。個人的にはすごく好きな言い回し。かつて北ヨーロッパの覇権を巡って争いあって、支配下に置かれていた国だってあった。けど、今は仲良しですよね。
日本の周りはどうですか、、
そんな兄弟でも国の政策は全然違ったりするんです。EUに入っていない北欧の国があるくらいなので。
僕の学部時代の卒論のテーマはざっくりスウェーデンを絡めた移民についてでした。スウェーデン留学時に感じた移民難民の多さからです(正確にはもう少し研究動機はあります)。
スーパーに行けば入り口で物乞いをする人がいる。でも、僕がいま住んでいるノルウェーではまだそういう人を見かけていません(ここでいうノルウェーとはスタヴァンゲルを指します)。
この移民というワードを取り上げても、一口に北欧でまとめてしまうのは少し偏りがあると思います。だから本当はリスペクトを込めて、北欧という単語は使いたくない。
だってどう頑張ってもイコール(=)で繋げられない。
スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、そしてアイスランドを円で描き(ベン図というやつです)、共通する部分を重ねた時、たぶんそれってかなり小さくなってしまう気がします。あるいはこい〜部分もあればうっすい部分もある。スウェーデンがデンマークの部分集合でなんてありえない話ですよね。かと言って空集合というわけでもない。
なぜ北欧と言い続けるのか?
それはスウェーデンも、デンマークも、フィンランドも、ノルウェーもアイスランドもまだまだ認知度が低いと思うからです。
5カ国合わせても3000万人に満たないんです。
みなさんご存知のイギリスやフランス、ドイツは6000万人を悠に超えている。5カ国足してもイギリスの半分以下です。
人口550万人の国(例えばフィンランド)でフランスほど知名度がある国ってないんじゃないかな。一番人口の多い国のスウェーデンでも1000万人ちょっと。東京の人口にすら及ばない。
「スウェーデンってどこ?」
「ストックホルムってデンマークの首都?」
「フィンランドって何語話すの?」
こんな声を何百回と聞いてきました。ここで丁寧に、
「スウェーデンっていう国はね、まずスカンディナヴィア半島っていうのがあるんだけど、、」「スウェーデンの首都がストックホルムで、コペンハーゲンは、、」
「法律で定められているフィンランドの公用語は2つあって、、」
って説明すると、多くの場合そっぽ向かれます。その瞬間理解が止まっちゃう(と思う)んです。
僕は思いました「みんなは北欧っていう“地域”で認識しているんだ。」って。
だからあえて“北欧”っていう言葉を使って、その違いについてはもっと理解が深まってからで良い。
まずはできるだけ多くの人に知ってもらう方が先決。
北欧っていう言葉を使ってその入り口を広く見せたいんですよね。
入り口が広い方が人は入って来やすいと思って。新しいものへのハードルはできるだけ低く低く。
これは補足でしかないですが、ノルウェーの教授でさえ、スウェーデンの教授でさえ社会保障についてNordic modelなんて表現をするもんだから、少なからずやっぱり似ている存在っていう認識はあるんだなと思います。
北欧から枝分かれさせてスウェーデン、デンマーク、、、
とその違いを明確にしながら発信していくのはまだまだ長い道のりになりそうです。むしろそこまで必要なのかなとも少し思ったりします。
北欧に想い入れがある人こそこの「北欧」の乱用について思うところがあると思ったので、今日はこんな感じで僕の想いを文字にしてみました。
僕も本当はそちら側です。
でも結局のところ、最後に目指すべきはその国々への正確な理解。そこに旗を立てているので、そこまでの道のりは人それぞれでいいんじゃないかなって思います。
文筆家、写真家、イラストレーター。学部時代のスウェーデン留学が大きな転機となり、北欧のウェルビーイングを身体で学ぶべく、ノルウェーとデンマークの大学院に進学。専門は社会保障、社会福祉、移民学。2021年6月両国にてダブルディグリーで修士号取得後、帰国。現在は、アニメーション業界に飛び込み、ストーリーテリングの観点から社会へ働きかけるべく活動を広げている。フリーランスとしても活動している。又、北欧情報メディアNorrから派生した「北欧留学大使」を主宰し、北欧留学支援もしている。
■これまでの活動歴:「令和未来会議2020”開国論”(NHK)パネリスト出演」、「デモクラシーフェスティバル2020(北欧5カ国大使館後援)イベント主催」、その他講演多数