サーモンのお寿司が実はノルウェー人の尽力のおかげであったことはもう読んでくれましたか?お時間がない方はこちらからどうぞ!
「なぜノルウェーなしでサーモンの寿司は生まれなかったのか?〜あっさり編〜」
今回はこのサーモンのお寿司ががどのようにして日本で生まれたのかを詳しくみていきます!
圧倒的No.1の寿司ネタ:サーモン
マルハニチロ社の報告によると、回転寿司で一番人気のネタは8年連続でサーモン。脂身と艶のある見た目は食欲をそそられますよね。老若男女問わず愛されているサーモンは実は最初にお寿司として本格的に食べられたのは1995年。日本では1000年以上もお寿司が食べられているのに、なぜサーモンは最近のネタなのか?
日本では受け入れられなかった生の鮭
かつてお寿司といえば、マグロや鯛を指すことが一般的でした。鮭は日本でも食べられていたのですが、あくまでも火を通した食べ方が普通。当時食べられていた鮭は太平洋産のもので、寄生虫が付着していて生で食べるのは危険とされていました。こうしたことから「生の鮭」を食べるという発想がなかったんですね。その概念を覆したのがノルウェーだったわけなんです。
ノルウェーから始まった “Project Japan”
ノルウェーが水産業の輸出国として日本に焦点を当てたのが1985年ごろ。それまでの日本は水産業での自給率が100%近く、自国で賄えるくらいでした。それが乱獲と消費の需要が高まったため、供給が間に合わなくなり輸入する必要が出てきたのです。
同時にノルウェーも養殖生産の技術が高まっており、海外へ市場展開を試みていました。それでノルウェーが目を付けたのが日本でした。1974年にノルウェー政府の使節団が親善の輪を広げるために日本に訪れました。
そこで日本の漁業に対する嗜好に焦点を当てました。つまり、生の魚に対する警戒心があり敬遠しているということです。先ほどの通り、「生の鮭」を食べる文化がなかったんです。
そこから始まったのが”Project Japan”
ノルウェーが日本の漁業に参入し、そのシェアを伸ばそうとする試みです。
ノルウェーの工夫:どのようにして日本に参入したのか?
ノルウェー使節団が日本に訪れたとき、大使館関係者の間では生の鮭の評判は良かったそう。1880年に最初のノルウェー産が日本にの鮭が日本に上陸していたのですが、思うように伸びず。
何が障壁だったのか?
当時の使節団にいた方によると、「慣習」や「固定観念」が邪魔していたようです。鮭は火を通して食べるもの、という常識が日本人の頭にあったんですね。そこでノルウェーが打った策は、名前に新鮮味を持たせるということ。
「鮭=火を通して食べる」
のであれば、
「〇〇=生で食べるもの」
という新たな概念を生み出せばいい。そう考えた末、「サーモン」に辿り着いたのです。
つまり、「サーモン=生で食べるもの」
太平洋産の鮭を大西洋産の鮭を区別することを思い付いたのですね。
日本の食品会社との提携
転機が訪れたのは1992年。日本の大手食品会社であるニチレイ社と提携を結び、5000トンのサーモンを売り込むことに成功。しかも、「お寿司として売る」という条件付きで。
また、ほぼ同時期に始まった料理番組「料理の鉄人」でノルウェーのサーモンが取り上げられました。こうした甲斐あって、1995年ごろから本格的に日本の食卓にも並ぶようになりました。
1980年から1994年までの間で日本への輸出は+250%にも上り、1980年にはほとんどゼロに近かったサーモンの売り上げも1995年には28,000トンと大幅に増えました。
最後に
日本の対外漁業への需要が高まったことと、ノルウェーの海外進出の需要が相まって生まれた結果とも言えるこのサーモンのお寿司。偶然とも言えるこの巡り合わせが今や日本の食卓を支えるにまでなったと言っても過言ではありません。
日本人の価値観に大きな影響を与えるだけでなく、日本人の胃袋をもしっかり掴んだノルウェー。
今後とも日本との友好関係を強化してほしいですね!!
参考:
Japan Timesの記事より:
the local.no(ノルウェー情報サイト)より:
https://www.thelocal.no/20151103/salmon-sushi-is-a-norwegian-invention
全国すし商生活衛生同業組合連合会HP: https://sushi-all-japan.com/index_b2_1.html
Norway exports(ノルウェー輸出組合)より:
文筆家、写真家、イラストレーター。学部時代のスウェーデン留学が大きな転機となり、北欧のウェルビーイングを身体で学ぶべく、ノルウェーとデンマークの大学院に進学。専門は社会保障、社会福祉、移民学。2021年6月両国にてダブルディグリーで修士号取得後、帰国。現在は、アニメーション業界に飛び込み、ストーリーテリングの観点から社会へ働きかけるべく活動を広げている。フリーランスとしても活動している。又、北欧情報メディアNorrから派生した「北欧留学大使」を主宰し、北欧留学支援もしている。
■これまでの活動歴:「令和未来会議2020”開国論”(NHK)パネリスト出演」、「デモクラシーフェスティバル2020(北欧5カ国大使館後援)イベント主催」、その他講演多数