Q. フィンランドが世界1位に輝いたことといえば?
A. Happiness Index(幸福度)
Q. 幸福度ってどんな指標で数値化されている?
A. ???
北欧は何かとニュースで取り上げられる地域であって、幸福度もその1つ。北欧と聞けば、「幸せな国」というフィルターが無意識にかかる人も多いのでは?
でも、幸福度って何か聞かれると意外とわからなくないですか。僕もそうでした。
「幸せですか?」
と聞かれて、
「はい、幸せです」
と満を持して答えてもどんな基準で幸せと言っているのかわからないですよね。
僕はこれまでに世界の色んなところで色んなカタチの幸せについて触れてきました。でも、それぞれ価値観というものが違う。だからAさんが幸せということにBさんがそうであるとは限らない。
タピオカを食べて幸せになる人(食欲)もいれば、寝ることに幸せを感じる人(睡眠欲)もいますよね。
そんな目に見えない「幸せ」という感情(?)について数値化したのがHappiness Indexというもの。
そんな幸福度の指標がどんな基準でランキング化されているのか考えていきます。
幸福度とは?
この指標は国連の持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN: Sustainable Development Solution Network)という機関によって報告されているものです。世界の156ヶ国が対象になっています。
2012年に端を発して始まった世界幸福度ランキング。初年度の第1位はデンマークでした。
今年の第1位はフィンランド。2年連続ですね。
幸福度は大きく6つのセクターを基に順位が決められています。
・一人当たりのGDP
・寿命
・社会的なサポート
・人生選択の自由
・寛大さ
・汚職の有無
以下の通りです。
①一人当たりのGDP:
>世界銀行のWorld Development Indicatorに基づく。
②寿命:
>世界保健機関(WHO)のデータに基づく。
③社会的なサポート:
>必要な時に相応のサポートを受けることができるかどうか。
レポートでは
“If you were in trouble, do you have relatives or friends you can count on to help you whenever you need them, or not?”
World Happiness Report 2019: Technical Box 1(p.22) より抜粋
と書かれています。要はいざという時に心から頼れる人が近くにいるか、ということです。
④人生選択の自由:
>自分の生活を自らの意思で決めることができるか。それに満足しているか。
レポートでは
“Are you satisfied or dissatisfied with your freedom to choose what you do with your life?”
World Happiness Report 2019: Technical Box 1(p.22) より抜粋
と書かれています。
⑤寛大さ:
>他者に対してどれくらい寛容か
レポートでは
“Have you donated money to a charity in the past month?”
World Happiness Report 2019: Technical Box 1(p.22) より抜粋
と書かれています。チャリティー活動で寄付するかがポイントのよう。
⑥汚職の有無:
>政治やビジネスでの汚職があるか。
レポートでは
“Is corruption widespread throughout the government or not?”
“Is corruption widespread within businesses or not?”
World Happiness Report 2019: Technical Box 1(p.22)より抜粋
と書かれています。
こうした指標を見てみると、一人当たりのGDPと寿命以外は主観的な情報が数値化されているようですね。
幸せになるために大切なこと
少し誇大広告のようなタイトルをつけてしまいましたが、幸福度ランキングとその指標をよくみると、意外な傾向が見えてきたんです。それを少しシェアしたいと思います。
これが2019年度の世界幸福度ランキングの上位10位です。
フィンランドは6つの主要セクターではそこまで伸びてないものの、その他の要素でグッと伸びましたね。スウェーデンが少し遅れをとって7位にランクインしたものの、圧倒的に北欧諸国が強い。
気になる日本ですが58位でした。
なぜ、北欧がこんなにも強いのか?もう少し分析してみると、、
これはランキングの上位・下位3位に加えて、それぞれのセクターでの上位3位をまとめたものです。
ここから見えてくるものがあると思うんです。
セクターを1つだけ取ってみると、全体としての順位が3桁であっても、上位にある国もある。
カンボジアやミャンマーが良い例ですね。
カタールに関しては一人当たりのGDPしかデータが内容なので、「お金」という切り口から見たとき頑張っても29位までにしかならない。「お金では幸せは買えない」という典型なのかもしれません(かといってカタールの方々が幸せではないということではありません、悪しからず)。
シンガポールなんかは2つのセクター(汚職の有無、寿命)で世界一なのに、全体で見ると34位。
これってどういうこと!?
これはあくまでも僕の見解でしかありませんが、
おそらく人の幸福度は
「人との関係性の深さ」
で決まるんだと思います。
先ほどのオレンジの表に戻ると、北欧諸国は「社会的なサポート」のセクターで上位にあります。スウェーデンは25位と低いですが、これが全体としての順位(7位)を下げているのかもしれません。
シンガポールでの「社会的なサポート」は36位。全体は34位。
幸福度の主要な指標は6つと述べましたが、意外にもその比重は均等ではなく、「社会的な人との関わり方」が最も重要といっても過言ではないように思います。
TEDから学ぶ幸福論
こうした人との関わりの深さと聞いて、TEDを思い出しました。
もちろん、プレゼンテーションの方のTEDです。
僕が前から繰り返し見ているプレゼンに
“What makes a good life? Lessons from the longest studies on happiness”
というものがあります。YouTubeだけでも1500万回近く再生されているプレゼンです。日本語訳付でも見れるので興味があればぜひ見てくださいね(下にリンクあります)(以下、簡単な要約です)。
「ハーバード大学の成人研究所によって約80年間続いた研究からわかった人間の幸福についてのプレゼン。1938年に始まったこの研究は724人を対象に行い、そのうち60人が健在(2015年当時)、現在も彼らの子ども達のおよそ2000人が調査に参加しているようです。」
被験者の中には医者になったり、工場労働者、アメリカ大統領になった人もいたそう。社会的地位のある人が転落したこともあれば、その逆もあったようです。
こうした80年に渡る研究からわかったことがこれです。
良い人間関係は幸福と健康をもたらす
-Good relationship keeps us happier and healthier. – Robert Waldinger –
人は富や名声を求めがちですが、実際に必要なのは人との繋がりだったのですね。
もちろん単に繋がりを持てばよいというわけではなく、その関係性の深さが大切なんだそう。これはまさに幸福度の指標の「社会的なサポート」に当てはまりますよね。いざとなった時に手を差し伸べてくれる人が近くにいるかが人間関係という点で大切ということ。
幸福度ランキングを切り口に北欧の幸福度の実態について観てきました。
人間関係なんて大切なのは自明だけど、その関係を深め、維持するのは難しい。
壊れやすく修復しにくいものだから。
そんなことを思い返す機会になりました。
日本は世界でも長寿の国として知られています。
でも幸福度はまだまだ低い。
もしかしたら人との繋がりが鍵なのかもしれません。
更に加速する高齢社会、急速に発展する科学技術によって人の孤立化、関係の希薄さは問題視されていることです。身近なところから関係を作っていきたいなと自戒も込めて肝に命じておきたいです。
参考:
https://s3.amazonaws.com/happiness-report/2019/WHR19.pdf
文筆家、写真家、イラストレーター。学部時代のスウェーデン留学が大きな転機となり、北欧のウェルビーイングを身体で学ぶべく、ノルウェーとデンマークの大学院に進学。専門は社会保障、社会福祉、移民学。2021年6月両国にてダブルディグリーで修士号取得後、帰国。現在は、アニメーション業界に飛び込み、ストーリーテリングの観点から社会へ働きかけるべく活動を広げている。フリーランスとしても活動している。又、北欧情報メディアNorrから派生した「北欧留学大使」を主宰し、北欧留学支援もしている。
■これまでの活動歴:「令和未来会議2020”開国論”(NHK)パネリスト出演」、「デモクラシーフェスティバル2020(北欧5カ国大使館後援)イベント主催」、その他講演多数