紙幣に見るスウェーデンの偉人たち
このタイトルをみて、こんな疑問に思った方もいるかもしれません。
「スウェーデンってユーロ圏じゃないの?」
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「スウェーデンってキャッシュレス進んでるよね?」
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いずれにせよ「スウェーデンのお金事情」についてあまり知られていません。スウェーデンではスウェーデン・クローナ(SEK)という独自通貨を採用しています。
日本の紙幣に歴史上の偉人が印刷されているように、スウェーデンでも同じです。キャッシュレス化が急速に浸透しているスウェーデンでは、もはや生活レベルで紙幣を見る機会がほとんどないかもしれません。そんなスウェーデンの紙幣にはどんな人が印刷されているのか?スウェーデンが生んだ偉人について見ていきたいと思います。
まず前提として、スウェーデンの紙幣は6種類に分かれています。日本では4種類なので、少し多いですね。
それぞれ、20SEK(≒220円)、50SEK(≒550円)、100SEK(≒1100円)、200SEK(≒2200円)、500SEK(≒5500円)、1000SEK(≒11000円)です*。
*1SEK=11円で計算しています。
それでは、それぞれにどんな人が描かれているのか、1つ1つ見ていきましょう!!(2019年12月現在使われている紙幣です)
Astrid Lindgren
言わずと知れたスウェーデンの児童文学作家アストリッド・リンドグレーン(1907–2002)は20クローナ札に描かれています。有名な作品は「長くつ下のピッピ(Pippi Långstrump)」ですよね。
彼女は34の小説と、41もの絵本を残しました。累計1億6500万部以上を記録し、107の言語に翻訳されているようです。
人道主義者としても知られており、子どもの人権保護や平等、生態系保持、動物愛護、虐待反対など、幅広い分野で活動していました。そんな彼女はこんな言葉を残しています。
A childhood without books – that would be no childhood. That would be like being shut out from the enchanted place where you can go and find the rarest kind of joy
本がない幼少期なんて、そんなの幼少期だなんて呼べないと思うの。むしろ、数少ない喜びを見つけられる魔法のような場所から隔絶されているようなものよ。
Evert Taube
50クローナ札に描かれているのは、エヴェルト・タウベ(1890–1976)です。彼はスウェーデンが代表する作家として知られています。同時に作曲も手掛け、歌手としても活躍しました。
スウェーデンで最も尊敬されるミュージシャンとされていて、20世紀のスウェーデンにおけるバラッド(物語や寓意のある歌。語るような曲調が特徴)の立役者です。
Greta Garbo
100クローナ札に描かれているのはグレタ・ガルボ(1905–1990)です。ハリウッド女優として活躍しました。28本の映画に出演し、1954年にはアカデミー名誉賞を受賞しました。主演女優賞の受賞は惜しくも逃しましたが、3度ノミネートされた実力の持ち主。また、1954年には「世界一美しい女性」としてギネス世界記録に認定された経歴もあります。映画界だけでなく、ファッション等でも大きな影響を与えた人と言われています。
Ingmar Bergman
200クローナ札に描かれているのはイングマール・ベルイマン(1918–2007)です。北欧映画界の巨匠としてご存知の方も多いのではないでしょうか?特に有名な作品は「第七の封印(The Seventh Seal)」です。この作品はカンヌ国際映画祭にて審査員特別賞を受賞しており、他にも彼の作品は数々の賞を受賞してきました。こうした功績から20世紀を代表する映画監督とも呼ばれるほどです。
彼の作品が多くの人を魅きつける理由にはいつくかあるようです。例えば、馴染みのないスウェーデン語、映像から伝わる原生的な自然、北欧のイメージを彷彿させる亜麻色の髪を持つ女性。こうした異国感溢れる世界観が成功へと導いたようです。
Birgit Nilsson
500クローナ札に描かれているのはビルギット・ニルソン(1918–2005)です。スウェーデン南端部の田舎町で生まれ育った彼女。幼少期より音楽を志し、幼いながらにその才能を発揮していました。音楽以外にも人と話すことや、ものを書くことも好きであったようです。小さな農家を飛び出して、いつしか世界を飛び回るほどに大成した彼女ですが、いつまでも故郷のことを忘れませんでした。家族や友達には文通を続け、現役引退後は生まれ故郷にて家族たちと余生を楽しんだそうです。
Dag Hammarskjöld
最後に、1000クローナ札に描かれているのはダグ・ハマーショルド(1905–1961)です。かつて活躍したスウェーデンの外交官です。
ウプサラ大学にて経済学の学位を取得し、ストックホルム大学では博士号を取得。その後、長きに渡ってスウェーデンの財務、外交の分野に従事していました。また、スウェーデン銀行の総裁を担った時期もあります。
のちに彼は国際連合の第2代事務総長に選出され、特に平和活動に従事しました。しかし、その活動の最中、1961年のコンゴ動乱の仲裁の途中に飛行機の墜落で命を落としました。死後(1961年)、彼の平和活動を讃えてノーベル平和賞が与えられました*。
*現在ノーベル賞は存命の人に対して与えられことになっていますが、当時(1973年まで)は死後に与えられることもありました。
さいごに
今回は紙幣に描かれるスウェーデンの偉人について紹介しました。あの有名なアストリッド・リンドグレーンをはじめ、多方面で活躍した著名人を知るきっかけになれば嬉しく思います。更に理解を深めたい方は下記のリンクを参照してみてください!
参考:
●スウェーデンの紙幣について
Sveriges Riksbank:「Valid banknotes」https://www.riksbank.se/en-gb/payments–cash/notes–coins/notes/valid-banknotes/
●アストリッド・リンドグレーンについて
Astrid Lindgren Company:https://www.astridlindgren.com/en
●エヴェルト・タウベについて
Evert Taube:https://www.antiwarsongs.org/artista.php?id=13352&lang=en&rif=1
●グレタ・ガルボについて
Greta Garbo「About」:https://www.gretagarbo.com/about
●イングマール・ベルイマンについて
Ingmar Bergman「About Ingbergman」:https://www.ingmarbergman.se/en/about-bergman
●ビルギット・ニルソンについて
birgitnilsson.com「THE PERSON」:https://www.birgitnilsson.com/en-gb/the-person/the-person/
●ダグ・ハマーショルドについて
Dag Hammarskjöld Foundation「Dag Hammarskjöld’s life and legacy」:https://www.daghammarskjold.se/dag-hammarskjold/dag-hammarskjold/
文筆家、写真家、イラストレーター。学部時代のスウェーデン留学が大きな転機となり、北欧のウェルビーイングを身体で学ぶべく、ノルウェーとデンマークの大学院に進学。専門は社会保障、社会福祉、移民学。2021年6月両国にてダブルディグリーで修士号取得後、帰国。現在は、アニメーション業界に飛び込み、ストーリーテリングの観点から社会へ働きかけるべく活動を広げている。フリーランスとしても活動している。又、北欧情報メディアNorrから派生した「北欧留学大使」を主宰し、北欧留学支援もしている。
■これまでの活動歴:「令和未来会議2020”開国論”(NHK)パネリスト出演」、「デモクラシーフェスティバル2020(北欧5カ国大使館後援)イベント主催」、その他講演多数