北欧、北欧ってよく言われますが、実際どんなところなのか曖昧な人も多いはず。北欧はあくまでも地域を指すわけで、それぞれの国がどんな国であるかまで知っている人は意外と少ないと思います。
今回は「ややこしい北欧の分類」のパート2ということで、EUとユーロ€にフォーカスしてみます!「ややこしい北欧の分類 Part1〜ScandinavianとNoridc〜」がまだの方はコチラからどうぞ!
ヨーロッパにあるからと言って全ての国がEUに加盟しているわけではないですよね。
そもそもEUってどんな組織なのか確認ですが、EUはヨーロッパ連合(European Union)の略称です。幾度のヨーロッパでの大戦を経て、戦後復興が必要になったのですが、そう簡単に立ち直れるものではなく、隣国との共同の考えが生まれました。そうしていつくかの共同体が発足して1993年に生まれたのがEUというわけです(もっと詳しい経緯を知りたい方は下の参考リンクを参照ください)。
単一通貨ユーロもその流れででき、1999年から導入されました。もともと現金として使われなかったのですが、2002年から紙幣と硬貨が流通するようになりました。
EUとユーロについてわかったところで本題の北欧の分類について。
これ、結構ややこしいんですよね。
北欧に留学してた人でもちゃんと整理できる人はそう多くないです。
北欧のEU加盟国(加盟順):
●デンマーク🇩🇰(1973年EC加盟)
原加盟国(フランス、(西)ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク)に続いて、1973年にイギリスとアイルランドとEC(ヨーロッパ共同体)に加盟。
●スウェーデン🇸🇪(1995年EU加盟)
オーストリア、フィンランドとともに1995年にEU加盟。
●フィンランド🇫🇮(1995年EU加盟)
スウェーデン、オーストリアとともに1995年にEU加盟。
●ノルウェー🇳🇴
EU非加盟
●アイスランド🇮🇸
EU非加盟
ノルウェーとアイスランドはEUに加盟していないんですよね。
なぜノルウェーはEUに加盟していないの?
まずノルウェーについて。答えはシンプルなんです。
「国民投票で反対派が過半数を超えたから」
こう言ってしまってはそれで終わりなので、なぜノルウェーにはEUという巨大組織が必要ないのか?まず一番大きな要因であろうノルウェーの産業構造です。海岸線が長い地形をしていることもあり、ノルウェーでは水産業がかなり盛んです。
ノルウェー産のサーモンなんか有名ですね。同時に農業も盛んな国なので、EUに加盟した時に主要産業へのダメージが大きいんですよね。
あとはオイルマネー。1960年代から北海油田の採掘に力を入れており、経済的にかなり裕福な国です。一人当たりのGDPも世界でずば抜けて高い国です。
それとノルウェーはNATO(北大西洋条約機構)の原加盟国であるため、ヨーロッパ諸国との連携も取りやすいんです(※スウェーデン、フィンランドは非加盟)。こうした理由から、むしろEUに加盟することがデメリットになりうるんですね。
アイスランドは?
アイスランドもノルウェーと同じように主幹産業が水産業。
水産業が直接国の景気に影響しているので、EU加盟に伴う悪影響があるのではという意見が多いようです。逆に水産業を強みとしてEU諸国と経済連携をとる、という見方もあります。
これに関してはEEA(ヨーロッパ経済領域)に加盟している(ノルウェーも加盟国)ため解決されていると言えそうです。
EUは「ヒト・モノ・カネ・サービス」の移動の自由が基本原則です。
アイスランドから2000キロも離れたところ(ブリュッセル)に政治をコントロールさせていいのか、アイスランドの独自性を保つべきではないのか、という加盟反対派の主張強いんです。
もちろん、加盟の動きはありました。2008年のリーマンショック以降、アイスランド経済も低迷し、加盟の手続きが進められました。しかし、EU経済は停滞から思うように抜け出せず、アイスランド経済の早期回復が見込めたという理由もあって、加盟申請が取り下げられました。
ヨーロッパ大陸からかなり離れた地にある島国としてEUとの距離をとるのはなかなか難しそうです。
ユーロ€ VS 独自通貨
さて、続いて各国の通貨事情についてです。
他のEU諸国もユーロを採用していたりとややこしいですよね。
現にブレグジット(Brexit)で何かと騒がしいイギリスもポンド£を採用しています。
●フィンランド🇫🇮:ユーロ€
●スウェーデン🇸🇪:スウェーデンクローナ(SEK)
●デンマーク🇩🇰:デンマーククローネ(DKK)
●ノルウェー🇳🇴:ノルウェークローネ(NOK)
●アイスランド🇮🇸:アイスランドクローナ(ISK)
圧倒的なクローネですねただ、注意しておきたいのがそれぞれ独立した通貨を使っています。だから例えば、スウェーデンクローナはデンマークでは使えません。
ちなみに、それぞれの独自通貨の名前がかなり似ていてややこしいので要注意。「クローナ」か「クローネ」で変わってきます。
フィンランドだけがユーロを採用しています(それまでは独自通貨マルッカを採用)。フィンランドは1917年に独立しました。他の北欧諸国よりも遅いです。国として立ち上げる時期であったので、独自通貨を維持し続けるというよりは世界第3の巨大経済圏の通貨に頼る方が正しい判断だったのかもしれません。
北欧はなぜユーロを採用しない?
もちろんここで指す北欧とはフィンランド以外です。北欧のイメージに中立や独立のイメージがあるかもしれません。自分の国は自分で守る、そんな意志の強さがユーロ不採用に現れているかもしれません。
ユーロを流通させる事でメリットは多くあります。ただ自国の経済施策が柔軟でなくなってしまうというデメリットもあります。
北欧って高福祉社会、福祉先進国などと言われるくらいなので、福祉や社会保障を特に大切にしています。言い換えれば、政府と国民との信頼関係です。
国として最重要とも言える信頼醸成として独自の福祉を維持させるためにあくまでも独自通貨を貫く姿勢が見られます。
最後にもう一度おさらいしておきましょう!
参考:
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol53/index.html
↑EUの歴史について(外務省HPより)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/page22_000083.html
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/osce/s_kikou.html
https://tabi-labo.com/281300/is-the-eu-worth-it-or-should-we-end-it#header-menu
文筆家、写真家、イラストレーター。学部時代のスウェーデン留学が大きな転機となり、北欧のウェルビーイングを身体で学ぶべく、ノルウェーとデンマークの大学院に進学。専門は社会保障、社会福祉、移民学。2021年6月両国にてダブルディグリーで修士号取得後、帰国。現在は、アニメーション業界に飛び込み、ストーリーテリングの観点から社会へ働きかけるべく活動を広げている。フリーランスとしても活動している。又、北欧情報メディアNorrから派生した「北欧留学大使」を主宰し、北欧留学支援もしている。
■これまでの活動歴:「令和未来会議2020”開国論”(NHK)パネリスト出演」、「デモクラシーフェスティバル2020(北欧5カ国大使館後援)イベント主催」、その他講演多数