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移民大国スウェーデン:これからの移民政策とは?

スウェーデンはどうすればいい?


先ほど書いたように、移民が経済に与える影響はそこまで大きくなさそうです。もちろん、移民の流入によって新しく化学変化が起きる可能性(例えば、ケバブのような食文化が持ち込まれるとか?その他、科学技術などにおいても同様)は否定できず、もとより移民問題はもっと複雑なのでひとえに「影響がない」と言い切ることはできません。

それでも、今後のスウェーデンの移民政策についていえば、この論文からはこんな風に結論付けることができます。


新規で受け入れるよりも、
既存の移民を活かした方が良い

今後とも移民を積極的に受け入れてしまうと、むしろマイナスに働く可能性が高いです。と言うのも、先ほど見たように移民による経済効果が小さいのにも関わらず受け入れを辞めないと言うことは、その分、国としての支出が増えると考えられます。

どれだけ上手く移民が労働市場に溶け込めたとしても、それがGDPにもたらす影響は±1%程度と言う試算もあります。

つまり、経済規模は大きくなっていないのに、人口だけ増え続け、それに伴って移民に対する社会保障費も増える

それよりかは、すでにスウェーデンに住んでいる移民を上手く労働市場に巻き込むことの方が大いに効果があります。既存の移民が労働市場で貢献すれば、結果としてスウェーデンの人口構造や社会保障費に影響を与えることなく、経済貢献が見込めます。

また、現状としてネイティブと移民の就労率には15%以上の大きな差があり、この差によって大きな問題が生まれています。

それこそ、失業手当などが移民に回ってしまうと、ネイティブの人たちが懸命に働いて稼いだ賃金の多くが税収として支払われてしまうので、いわゆる「福祉のタダ乗り」ができる構造になってしまいます。

現状、スウェーデンの社会福祉はこちらに傾いており、それが近年の国政選挙の結果に見て取れます。
詳しくはこちら→「選挙結果から見るスウェーデンの移民事情」

やはり、新規移民拡大よりも、既存移民との共存にフォーカスした方が良い。そうすることで、失業手当などの公的支出が減り、一方で就労者の増加に伴って税収も増えるので、公的セクターの規模が大きくなります。





最後に、


これまで、スウェーデンの移民と経済の関係性について見ましたが、これを他の国に応用することは少し危険です。

移民受け入れについては日本のような高齢社会がかなり進んでいる国では効果的であるとされています(もちろん、日本での移民受け入れについては様々な利害や要素が複合的に絡み合っていて、一概に言えないところも多いですよね)。

これまでたくさんの移民・難民を受け入れてきたからこその進むべき道であって、そうではない国からしたらまだ違う次元にいます。

ただ、スウェーデンの移民史を見る限り、かつての労働移民はスウェーデン経済に大きく貢献していたと言う事例があるので、こうした過去の成功例、あるいはこれまでの失敗例は積極的に移民先進国から学んでいくべきですね。




●今回参照した論文:

Ekberg, J. (2011). Will Future Immigration to Sweden Make it Easier to Finance the Welfare System? European Journal of Population.

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