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フィンランド / Finland 歴史 / History 記事 / Article

みんなが知らないフィンランドの歴史

大戦後、そして今

 

大戦下、なんとか独立を維持できたものの、戦後処理としてソ連への莫大な賠償金を抱えたフィンランド。「偉大なるフィンランド!」の夢を目指して意気揚々としていた国民はそうもいかず、その支払いに苦しみます。賠償金支払いのスケジュールは実質不可能なものであった上に、ソ連が為替レートを操作したため元値よりも2倍の金額にまで膨れ上がったそう。アメリカがマーシャルプラン(ヨーロッパ経済復興援助計画)を提示した際、フィンランドはあくまでも自らの自治を守りたいとの想いから受諾を拒否しました。

当時のフィンランドの産業構造として、そのうちの7割が機械業などの重工業で占めていました。政府は課税を厳しくし、産業化に投資するようになりました。これによってフィンランドは急速に産業発展を遂げました。こうしたフィンランドの国を挙げての尽力により、1952年には賠償金支払いを終えました。

国内の発展はもちろん、当時のフィンランドは外交においても世界的に脚光を浴びたと言います。ウルホ・ケッコネン大統領(任期1956〜1982年)はソ連との関係性向上に一役を買いました。彼は1955年の北欧理事会(Nordic Council)への加盟に寄与した功績もあります。これにより、労働者の国境移動自由化、パスポートフリーゾーン、学術機関の連携、同様の福祉モデル構築などが促進されました。

その他にも同時期にフィンランドでは数々の外交上の変化が起きています。1955年には北欧諸国でも早々に国際連合に加盟を決め、1961年にはソ連との交渉により、欧州自由貿易連合(EFTA)にも加盟することができました。

80年代までは経済成長などで上向き傾向にあったフィンランドですが、90年代に入ると経済停滞を陥ります。ソ連崩壊や、当時の独自通貨マルッカの価値低下、多くの企業の倒産、高い失業率などがフィンランドに大打撃を与えました。こうした悪循環を受けて、フィンランドは1994年にヨーロッパ連合(EU)に加盟を決めます。これにより、EUより経済支援を受け、他国から低価格で食料を輸入できるなど、フィンランド経済は再び右肩上がりに。

EUでの存在感も増し、1999年と2006年にはフィンランドがEU議長国を務めました。21世紀も花の幕開けをしました。2000年には首都ヘルシンキが欧州文化都市に選定され、2002年にはユーロを採用。2003年にはアンネリ・ヤーテンマキ氏がフィンランド初の女性首相に就任しました。

 

 

近年では、世界幸福度ランキングで3年連続1位に選ばれ、また2019年末には世界最年少の首相であるサンナ・マリン氏が就任し、世界を賑わせました。これからもフィンランドは北の小国として世界に大きなインパクトをもたらしていくことでしょう。

 

コラム〜サウナ外交〜
フィンランドでも名声高いウルホ・ケッコネン大統領。かつてのフィンランドの独自通貨マルッカに紙幣に描かれていたほど。彼にまつわる逸話として「サウナ外交」があります。彼は、「サウナの中では誰であろうと平等である」という信条を持っていたそうです。在任期間中、ソ連との関係向上に向けて尽力したケッコネン大統領ですが、実はこれに「サウナ」が関係していたんだとか。ケッコネン大統領が60歳の誕生日を迎えたとき、当時ソ連の指導者であったフルシチョフは彼を祝福しに行ったそうです。これを良いことにケッコネン大統領はフルシチョフ氏をサウナに招き、午前5時まで楽しんだと言う。これが功を奏したのか、フルシチョフ氏はフィンランドが西側との経済協力をしたい意向を支持する電報を送ったそう。これにより、フィンランドは欧州自由貿易連合(EFTA)に加盟するに至ったというのです。日本で置き換えると温泉文化になりそうですが、温泉が外交の潤滑油になるのかも?

 


最後に


 

これまでフィンランドの歴史について見てきました。冒頭の問いの答えは見つけられましたか?


「なぜフィンランドではスウェーデン語が公用語になっているの?」
「北欧の中でもフィンランド語だけ全く違うのはなぜ?」
「SISUってよく言われるけど、どうしてこんな気質が育まれたの?」



ここまで読んだあなたはこの答えがわかったかと思います。今でさえ華々しい豊かな国のように思えるかもしれませんが、歴史を振り返るとそこには明るい過去があったとはとても言えません。今のフィンランドがあるのは間違いなく過去の歴史があるからであり、負の歴史を持っているからこそ今に見る強固で柔軟な精神性が育まれたのだと思います。

北欧と一口に言っても、スウェーデンとフィンランドでは全く違った文脈で語る必要があります。それは異文化を知る上での最低限のマナーであり、僕たちが払うべき最大の敬意だと思うのです。

人口550万人の国からはこれからも学ぶことは沢山ありそうです。

 


参考文献:

Swallow, D. (2011). Culture Shock!-A Survival Guide to Customs and Etiquette: Finland. Marshall Cavendish

https://www.suomenlinna.fi/ja/linnoitusjapani/

Nordic Council:https://www.norden.org/en/information/nordic-council

「インドヨーロッパ語族の系統図」:http://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog/2010-07-26-1.html

「ウラル語族」:http://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog/2010-09-05-1.html

世界の歴史まっぷ「ヴァイキングの侵入地図」:https://sekainorekisi.com/download/%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%81%AE%E4%BE%B5%E5%85%A5%E5%9C%B0%E5%9B%B3/

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