5分でわかるノルウェー有数の観光地「スタヴァンゲル」
スタヴァンゲルという町を聞いたことはありますか?「知っている!」というあなたは北欧について詳しい人かもしれません。観光地として世界的に有名な町なので、旅行先として候補に考えた人もいるかと思います。
ところで、私事ながら大学院生としてノルウェー南西部のスタヴァンゲルに来てから早くも10ヶ月ほどが経ちました。来る前は”何となく”でしか知らなかったスタヴァンゲルも今では第2、第3の故郷です
今回はそんなスタヴァンゲルに住んでみて、僕なりにスタヴァンゲルの魅力について「5つ」に絞ってまとめます。これから旅行先としてスタヴァンゲルを選ぶ人に向けて届きますように。
そもそもスタヴァンゲルってどこにあるの?という方が大多数だと思うので、まずは場所を押さえておきましょう。
上記のインフォグラフィックのように、スタヴァンゲルはノルウェーの南西部に位置していて第4の町とされています。ノルウェーは南北に伸びて、北に行くほど東へグググっと伸びているのでスタヴァンゲルは南端の町と言えますね。
さて、そんなスタヴァンゲルはどんな町なのか?5つの要素に絞って確認していきましょう。
スタヴァンゲルに行く前に知りたい5つのコト
①「フィヨルドの町」としてのスタヴァンゲル
ノルウェーと聞くとすぐに頭に浮かぶものは、「自然」だと思います。「オーロラ」や「氷河」や「フィヨルド」などなど。中でもフィヨルドは、元を辿ればノルウェー語であるため、極めて”ノルウェー的”なものと言えます。
ノルウェーのフィヨルドでも特に有名なものに、ソグネフィヨルド(Sognefjorden)とリーセフィヨルド(Lysefjorden)があります。後者のリーセフィヨルドが、実はスタヴァンゲル近郊にあるんです。
加えて、このフィヨルド内にかの有名な断崖絶壁「プレーケストーレン(Preikestolen)」があります。英語では”Pulpit Rock”と呼ばれています。片道2時間ほどのハイキングコース(初心者向けとされています)になっていて、604mの崖から見下ろすフィヨルドの景色を一目見ようと日本からも沢山の観光客が押し寄せます。
プレーケストーレンの他にも「イェラグ(Kjerag)」という名所も有名です。崖と崖の間に挟まった楕円型の大きな岩。「これ、どうやって挟まったの?」と思わず言いたくなる珍景色です。こちらもハイキングコースがありますが、難易度が高い(多くのサイトに“Challenging”と記載されている)上に、時間もかかるのでなかなかいけない秘境かもしれません。
ハイキングまでは、、という方はクルーズツアーもあるので、そちらに参加してみても良いかもしれません。呼吸すら忘れるほどに雄大で美麗なリーセフィヨルドを一度味わってみてはいかがでしょうか。
②「石油の町」としてのスタヴァンゲル
ノルウェーは北欧の中でも頭1つ抜き出て経済的に裕福であることを知っていますか?そうさせているのが、「石油」の存在。北欧は資源に恵まれない国で、かつては極貧な地域でした。そんなわけで、北欧を出て、アメリカや他国に移住する人がいたくらいです。今となっては移民受け入れ国として知られていますが、昔はむしろ送出国だったんですね。
資源に乏しい北欧であっても、ノルウェーはちょっと違います。1960年代から石油採掘が始まって、1969年のクリスマスの時期(12月23日)に発見されました。ノルウェー中が大騒ぎになり、それ以降一気に裕福な国へとのし上がっていきました。
そんな一夜にしてノルウェーを「リッチ」な国に変えた石油の始まりはスタヴァンゲル沖でした。今でも採掘は続いていて、世界中からビジネスパーソンがやってきます。前述の通り、フィヨルドを見に世界中から沢山の人がやってくるので、スタヴァンゲルは意外にも国際都市なんです。
そんなスタヴァンゲルですがノルウェーの中でも「石油の首都」として有名です。町の中心部には「スタヴァンゲル石油博物館」があり、どのような背景で石油が見つかったのか、これからの石油産業とノルウェー、などといったことを考えるきっかけになります。石油博物館で考えたこれからの石油産業について、以前ブログ記事を書いたので合わせてそちらもご覧ください。
→『クイズで考えるノルウェーの石油産業と環境問題』
③「歴史の要所」としてのスタヴァンゲル
ノルウェーの歴史を知っている方は少ないかもしれません。ざっくり説明すると、9〜12世紀にヨーロッパを荒らし回った北の海賊「ヴァイキング(Viking)」を経て、ノルウェーはデンマーク、スウェーデンの統治下に置かれます(同君連合)。意外にも現在の体制になった(独立)のは1905年のことです。
そんな屈辱的な歴史をもつノルウェーですが、スタヴァンゲルはそれよりも遥か昔のノルウェー史において非常に重要な場所でした。
872年のことです。この年はノルウェーが初めて統一された年として知られています。それまでは複数の君主が乱立していました。そしてノルウェー統一を決定づける戦いが「ハフルスフィヨルドの戦い(The Battle of Hafrsfjord)」です。
この戦いにて勝利を収めたハーラル1世(Harald fairhair)がノルウェー初代国王に就きました。
このノルウェー統一を記念して建てられたのが「Sverd i fjell」です。英語では“Swords in Rock”で、読んで字のごとく「岩に突き刺さる剣」ですね。
ノルウェーの歴史の外観を知りたい方は合わせて『5分でわかるノルウェーの歴史』をご覧下さい。
「Sverd i fjell」の詳しい説明に関しては、『岩に刺さる3本の巨大な剣:ノルウェー歴史伝』をご覧下さい。
④「海の町」としてのスタヴァンゲル
今でさえ、「石油の首都」と呼ばれるようになったスタヴァンゲルですが、かつては単なる港町でした。1800年ごろまでは2500人程しか住んでいなかったこの町も今では14万人程の中規模の町にまで発達しました。
もともとスタヴァンゲルはどんな産業を生業としてきたのか。そんな過程について少し見ていきましょう。
かねてから港町であったスタヴァンゲルはまず「漁業」が主要産業でした。スタヴァンゲル近郊で魚(主にニシン)を取っては、樽に入れて塩漬けにしたりしていたそう。ノルウェー国内にとどまらず、スウェーデン、デンマーク、バルト海地域などでニシンの需要が大きく、交易品として輸出していました。
補足ですが、スタヴァンゲルには缶博物館(Norwegian Canning Museum)があります。樽に詰めて保存してた魚を、缶に詰めて保存するようになったという背景がありました。
「漁業」が盛んになってから「造船業」と「海洋観光業」が盛んになります。漁業で培った造船技術と、18世紀中頃から19世紀初頭にかけてイギリスで起きた産業革命の波がノルウェーにやってきたのとマッチする時期。19世紀終わりのことです。蒸気機関の技術を活かして、「人を運ぶ」ために造船が盛んになります。
「モノ」から「ヒト」へと運ぶものが変わったということですね。
スタヴァンゲルは海外との拠点地としても栄え、事実新大陸アメリカへの航路開拓の要所でした。
かつては2500人しかいなかったスタヴァンゲルは、漁業を皮切りに産業形態を変えながら発達してきました。今日のフィヨルドクルーズなどの先駆けとも言えそうです。
スタヴァンゲル中心部の港には大型クルーズ船を見ることも珍しくありません。
⑤「ビールの町」としてのスタヴァンゲル
最後は「ビール」です。ビールの町?と聞いてもピンと来ないかもしれませんが、スタヴァンゲルには有名なビール醸造メーカーがあります。それが、「LERVIG(ラーヴィグ)」です。ちょっぴりファンキーなイラストイメージが特徴ですね。
LERVIGはノルウェーを代表するクラフトビールとして有名で、現在は日本を含む約20カ国に輸出しているそう。創業は2003年で、醸造所はもちろんスタヴァンゲルにあります。最近は日本のブリュワリー志賀高原とコラボした「ゆずラガー」なんかも発売しています。
街のパブなんかに行けば、LERVIGのロゴがプリントされたグラスでビールを楽しんでいる人を多く見かけます。
世界的にも有名なビールとして知られていて、日本でも都内などにて楽しめますよ。スタヴァンゲルに訪れた際には絶対に味わっておきたいクラフトビールです。
LERVIGのHPはコチラ!
日本語で説明しているコチラのサイトも合わせてどうぞ!
さいごに
今回はスタヴァンゲルという町について5つの要素とともにご紹介してみました。スタヴァンゲルへはきっと観光目的で来られる方が大多数だと思うので、渡航に当たって参考になれば幸いです。
もう一度だけおさらいしてみましょう。
スタヴァンゲルを知るための5つのこと!
>ノルウェーが世界に誇るフィヨルド!
>ノルウェーをリッチにした石油産業!
>ノルウェーの歴史はここから始まった!
>海の町スタヴァンゲルの産業変容!
>ノルウェーを代表するクラフトビール!
小さい港町ですが、魅力たっぷりのスタヴァンゲル。過ごしやすい夏にぜひ足を運んでみては?
文筆家、写真家、イラストレーター。学部時代のスウェーデン留学が大きな転機となり、北欧のウェルビーイングを身体で学ぶべく、ノルウェーとデンマークの大学院に進学。専門は社会保障、社会福祉、移民学。2021年6月両国にてダブルディグリーで修士号取得後、帰国。現在は、アニメーション業界に飛び込み、ストーリーテリングの観点から社会へ働きかけるべく活動を広げている。フリーランスとしても活動している。又、北欧情報メディアNorrから派生した「北欧留学大使」を主宰し、北欧留学支援もしている。
■これまでの活動歴:「令和未来会議2020”開国論”(NHK)パネリスト出演」、「デモクラシーフェスティバル2020(北欧5カ国大使館後援)イベント主催」、その他講演多数