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【第1章】教育にみる『タテな日本』と『ヨコな北欧』

北欧にみるヨコな教育文化

 

国民「無償」皆学


 

日本では1872年(明治5年)の学制発布により国民皆学が目指されて、現在では小中学校の義務教育が施行されている。しかしながら、その後の教育機会については、特に大学において所得による教育格差が生まれていると言う懸念点がある。格差是正のために奨学金制度の充実なども図られているが、十分な制度が整っていないのが現状だ。

そんな中、北欧5カ国においては単に国民皆学が保障されているだけでなく、「無償」で教育機会が与えられている。以下のグラフは、「Education at a Glance 2019」による国立大学の年間平均授業料の比較である。

 

上記サイトを元に筆者作成
©︎北欧情報メディアNorr

 

このグラフからわかるのは、北欧4カ国(アイスランドのみデータなし)とも国立大学の授業料が無料であることだ。今回取り上げなかった国で学士から博士課程まで授業料がかからない国には、例えば、スロバキアとスロベニアがある。それほどに大学の授業料が無料である国は世界でも稀有であると言うことだ。教育で注目されているオランダなどでさえも国立大学の年間平均授業料は学士課程で2537米ドルと決して安上がりなものではない。

又、国立大学(政府が運営する大学機関も含む)と私立大学の入学者数の割合についても興味深い。北欧における国立大学入学者の割合(学士、修士、博士全て含む)は、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデンで順に、99%、53%、85%、94%だ。フィンランドの割合が低くなっているが概ね国立大学入学者である事がわかる。つまり、北欧では一般的に授業料を払わずとも、大学まで無償で教育機会を享受できるという事だ。

ここに教育にみる北欧のヨコな教育文化が見て取れる。所得格差などに関わらず、等しく教育機会が保障されているというところに「ヨコ」並びの考えが汲み取れる。

ちなみに、日本における国立大学入学者の割合は25%に留まっている。残りの75%は高額の授業料を支払って私立大学に通うというのが日本の大学事情である。

 


教育へ重きを置く北欧諸国


 

前節で確認した国民「無償」皆学。大学まで無償で教育を受けられることが保障されているわけだが、これは北欧に限ったことではない。とは言っても、北欧諸国がどれほど教育に力を注いでいるかをデータを元にみていく。今回取り上げるのは、GDPに占める教育費の公的支出の割合だ。先程と同様に、OECD諸国による「Education at a Glance 2019」を参照しながら、2016年のそれぞれの国のデータをまとめた。

 

 上記サイトを元に筆者作成
©︎北欧情報メディアNorr

 

このグラフでは、「Education at a Glance 2019」で示された公的支出がGDPに占める割合のトップ10カ国と、OECD諸国の平均値、そして日本の割合を示している。世界でも北欧諸国が教育に熱心であることは一目瞭然であろう。中でも、世界一教育に予算を注いでいるノルウェーは、頭一つ抜きん出ている。一方で、日本は比較可能な35カ国中最下位で、2.9%という結果だった。

再三になるが、北欧5カ国とも大学までの授業料は無料である。それに加えて、EU/EEA*及びスイス連邦の国民であれば授業料は無料となる。言うまでもなく、これは国民の高税率負担による高度な社会福祉モデルの恩恵にほかならない。

しかし、更にノルウェーに限っては、それ以外の国の人であっても授業料がかからないという太っ腹ぶりだ。つまり、日本人であっても授業料を払わずに学士、修士、博士号を取得できるというわけだ(筆者は現在ノルウェーの修士課程に在籍中)。

自国民に留まらず、近隣の国・地域の人にも教育の門戸を広く開放している北欧諸国。これにはどんな理由があるのか。明確な理由はわからないにしろ、もともと北欧諸国はその極端な気候柄、環境による制約が大きかった(ノルウェーの石油資源は例外)。したがって、人的資源を獲得することで国を発展させてきたという背景がある。

これに関して顕著なのは、スウェーデンである。第2次世界大戦では中立を保ったため、被害を最小限に抑えて戦後復興に取りかかる事が出来た。そこで労働移民を大量に受け入れることが可能になり、経済発展に繋がったと言える。

今となっては労働移民の受け入れ口は萎んだものの、大学などの高等教育機関でのいわゆる高度人材の受け入れをスムーズに行なっていると見ることができる。

詳しいスウェーデンの移民史については、「いつからスウェーデンは移民大国になったの?」を参照したい。

*EEA=欧州経済領域であり、これはEU27加盟国に加えて、アイスランド・リヒテンシュタイン・ノルウェーが加盟している。

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