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【プロローグ】『タテ社会日本』と『ヨコ社会北欧』

初めて北欧に足を踏み入れたのが2016年。トランプ大統領の当選で世界中が揺れに揺れ、ジャスティンビーバーをも唸らせたピコ太郎(PPAP)が流行ったのもこの年だった。部屋のベッドで1人、その滑稽な音と動きを見て笑ったのも懐かしい。時代が大きく変わる中で、僕自身も大きく変わるきっかけが、この2016年にある。

当時大学2年生だった僕は、所属学部のカリキュラム上、1年間の留学が必修になっていた。そこで選んだのが、スウェーデンという北の大国。

これまで何百回と聞かれたこの質問。

「なんでスウェーデンにしたの?」

聞きたくなるのも無理はない。これと言った明確な理由はないのだが、どこかで社会保障に興味関心があり、その小さな好奇心が僕を動かしたのもしれない。

留学以前は全くと言ってよいほどスウェーデンに無知であった。なんとなく「幸せ」で、なんとなく「社会が安定している」と言った月並みのイメージしか持っていなかった。

当時の僕の脳内世界地図で北欧との距離は極めて大きいものであった。きっと今これを読んでくれているあなたと同じか、それ以上であっただろう。


スウェーデン留学当初の筆者

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スウェーデン留学を今振り返ると、これ以上にカラフルな生活はなかっただろう。自分の思うが儘にキャンバスに色を塗ることが許されていた。そんなお花畑のような生活を終え、いざ帰国。その落差に驚愕した。エンジェル・フォールから突き落とされたかのような現実を見た気分だった。

幻想とでも言えるかのようなあの時の生活がパッと消えてしまいそうになり、夢か現か幻か。かもすると、あの時のパレットの絵の具達は初めての海外生活という魔法で彩られていたのかもしれない。そう思うようになった。

なんとなく「幸せ」だと思っていた北欧に住む人々は果たして本当に幸せなのだろうか。どこまで社会保障が行き届いているのか、そんな本質を見逃していることに気付いた時は、さらに称名滝から突き落とされたような気分だった。

就活を控えていた僕はそんなモヤモヤを心の隅っこで押し殺して、キラキラした言葉達を面接官に向けてフッフッと振り撒いていた。自分に嘘をついているという罪の意識に耐えられず、ある時ピタッと足を止めた。社会のレールから一歩足を踏み出す瞬間だった。

そして、かつては北欧の地理すらままならなかった僕が、皮肉にも昨年(2019年)8月より、ノルウェーの大学院に進学し、北欧の社会保障を中心としたソーシャルワークについて学んでいる。あの時の「なんとなく」を幻想で終わらせず、シラフに戻った自分の眼で、しかと確かめたかったのだ。

同時に、昨年4月16日に北欧情報メディアNorr(当サイト)をHayatoと立ち上げた。本当の北欧の姿を書き留め、一人でも多くの人と共有したい、そんな想いから始めた当メディアもまもなく開設1年という節目を迎える。

これまで僕は、ジャンルを問わず北欧のことを書き記してきた。しかし、これまで書いてきた117本の記事を振り返った時に、「果たしてこんなことを書くためにNorrを立ち上げたのか」と思うようになった。

脳内世界地図における北欧との距離が限りなく無に近い今、「北欧ってどんなところ?」と自問自答してみると、即座に答えられない自分がいた。少しばかりの恥らいを感じながらも、ノートに北欧という国・地域の特徴をマインドマッピングしてみる。

教育、男女平等、フィーカ、コーヒー、幸福度、サウナ、家具、ヒュゲ、事実婚、政治参加、大きい政府、、

今となっては普く広まっているこんな言葉達をぼんやり見つめてみる。すると、一つの特徴が浮かび上がってきた。

それが紛れもなく、北欧における「ヨコ」な社会だ。

世界においては稀有で高度な社会福祉モデルを構築した、その確固たる理念には普遍主義があり、平等主義がある。ジェンダーギャップを見れば、常に北欧諸国は上位につけている。一人当たりのコーヒー消費量が世界一であるフィンランドにおいては、カハヴィタウコというコーヒーブレイクの時間が法律で保障されている。教育に対する公的支出が世界的にみて高い北欧では、大学までの授業料が原則無料だ。

こうした要素をさらに因数分解して、その先にあるものを追求するために今回の「『タテ社会日本』と『ヨコ社会北欧』」を執筆するに至った。

日本と北欧を比較して、優劣をつけたい訳ではない。あくまでも、「北欧ってどんなところ?」という問いに対する僕なりの解答をここに埋めていくのである。そんなエゴから指を動かして書いていく。もとより、その解答を際立たせるために、日本という馴染み深い国を引き合いに出していると理解していただきたい。

今の日本にしろ北欧にしろ、全ての国はその歴史に基づいて形作られてきた。かねてから育まれてきた日本特有の「結の文化」は日本にだからこそ生まれたのであって、それを北欧でコピーするのは少し無理がある。柳田國男が見出した「ハレ」と「ケ」という日本古来の世界観は容易に真似できるものではない。「うま味」として知られる第五の基本味を発見したのは池田菊苗であって、日本以外で発見された可能性は考えにくい。

北欧についても同じである。家庭を彩るインテリアをそのまま応用して満足するだけでは、単なる表面的な模倣に過ぎない。総人口1000万人というスウェーデンにおいて高度な社会保障が構築されてきたのには歴史的な背景がある。そこにある本質を理解してこそ、模倣への第一歩であり、それが最大にして最低限の敬意であると思う。

これは北欧情報メディアNorr開設にあたって心してきたことであり、今後とも貫き通していきたいところである。

今回の「『タテ社会日本』と『ヨコ社会北欧』」はこれまでの北欧情報メディアNorrの記事とは趣向を変えている。つまり、一つの事柄について一つの視点からみた単発な記事として終わらすのではなく、複数の角度から切り込んでいきたいと思っている。

以下のような章立てで書いていく。


【第1章】教育にみる『タテな日本』と『ヨコな北欧』

【第2章】コミュニケーションにみる『タテな日本』と『ヨコな北欧』

【第3章】言語にみる『タテな日本』と『ヨコな北欧』

【第4章】性にみる『タテな日本』と『ヨコな北欧』

【第5章】企業にみる『タテな日本』と『ヨコな北欧』

【第6章】歴史にみる『タテな日本』と『ヨコな北欧』



「北欧ってどんなところ?」


その問いに対して誠心誠意、考えていきたい。


令和2年4月9日  松木 蓮

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